ぎっくり腰(急性腰痛)の東洋医学的見解

query_builder 2023/04/12
茨木_鍼灸東洋医学自律神経
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今年は桜が散るの、早かったですねぇ。。。

おかげで今年は散歩くらいでしか花見、できませんでした…(;_;)


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先月はぎっくり腰を訴え、お越しになる患者さんが多かったです。



その前は秋頃、冬に入る前に多かったかな。



なぜ、ある時季になると増えるのか?


たまたま?


いえ、そんなことありません。

ちゃんと理由があるのです。


そんなことを今回は東洋医学的に分析しながら綴っていこうと思います。



【そもそもぎっくり腰って?】


よく”ぎっくり腰”という言葉を耳にしますが…そもそも何なのか?


簡単に言うと急に起こる痛みの程度が強い腰痛です。

病院では「急性腰痛症」や「腰部捻挫」というように言われることが多いかと思います。


なにか重いものを持ったときや、腰部のねじる動作をしたときなどに起こることが多いですが、

朝起きた直後やくしゃみ、普段の日常動作の中で不意に起こるものもあります。


西洋医学では原因は、腰椎の椎間関節や椎間板に許容以上の負荷がかかって損傷、捻挫をした状態、

または腰を支える筋肉や腱などが損傷された際に生じると言われております。

多くの方が起こすものは、ほとんどこれらが当てはまるのではないかと。


中には椎間板ヘルニアや、脊柱菅狭窄症、物理的負荷がかかった場合ですと腰椎圧迫骨折などの病気が隠れている場合があります…

が、これらの場合は脚に力が入らず歩けない、脚に痺れが出始めた…などの特徴的な兆候が出現するので判別はしやすいかと思います。


今回お話していくのは前者…

腰椎の椎間関節や椎間板、筋肉・腱の損傷に当てはまる急性腰痛ですね。


こちらを東洋医学ではどのように考えていくのか…

というお話をしていきます。



東洋医学の聖典である『黄帝内経(こうていだいけい)』以降の後世では、多くの書類で「卒腰痛(急性の腰痛)」「久腰痛(慢性の腰痛)」に大きく分類されています。


今回のぎっくり腰に関しては明らかに急性のものなので、前者の、「卒腰痛」に含まれます。



こうして古典にもしっかり残されていることから、昔の人達もぎっくり腰に悩まされることがあった、ということですね。



【中医学で考える卒腰痛(急性腰痛)】


そもそも『腰』というものは東洋医学では、先天的なエネルギー(両親から受け継いだそもそもの生命エネルギー)や『精』(気や血を凝縮したようなもの)と関連の深い”腎の臓”と関連が深いです。


「腰は腎の府」という言葉があるくらいです(府=収まるところ、という意味がある)。

そもそもの生命エネルギーや精と関連がある、と言いましたが…だから加齢とともに足腰が少しずつ弱ってくるわけですね。


こういった腎の弱りからくるものは徐々に、緩慢に症状が進行し、慢性的に痛みが持続するのが特徴です。

多くの慢性腰痛は腎虚(腎の臓の弱り)が関与する場合がかなり可能性が高いです。


これについてはまたいつかお話できたらと。


では急性腰痛はどうなのか??


勿論、腎虚が絡んでいる場合も少なく有りません。しかし主従(メインとサブ)でいうと、急性に起こるものは従が腎虚であり、主がそれ以外の原因がある場合が非常に多いです。


中医内科学では以下のように分類されています。

①風寒の腰痛

②風寒湿痺の腰痛

③瘀血の腰痛



なんのこっちゃわからないと思うので簡単に解説を入れていきます。


①風寒の邪(冷え、と考えていただいてOKです)が身体に侵入して、身体の後ろを流れる足太陽膀胱経(あしたいようぼうこうけい)と督脈(とくみゃく)という経絡を阻害し、流れが悪くなったことで起こります。

漢方医学バイブルである『傷寒論(しょうかんろん)』では【太陽病】というものに含まれ、一種の”カゼを引いた”状態です。

※風邪だと東洋医学の用語である”風邪(ふうじゃ)”と混合してしまうため”カゼ”と表現します。

この傷寒論に「太陽之為病、脈浮、頭項強痛、而悪寒。」

→太陽病は脈が浮いて、頭や項が強ばるように痛み、悪寒する。


とあるように、これらがカゼの診断ポイントとなります。

全部が全部一致するわけではありませんが、風寒関与の急性腰痛はこれらの症状も出てきます。

痛み方は「腰背部の強張った痛み、ひきつるような感じ」とあります。


やはり冷えが関与するだけあって、冒頭で言った秋→冬の移行期に多く診られた印象です。


また、夏場の冷房にやられてこの風寒タイプのぎっくり腰を起こす人も少なくはありません。



②これは風寒に湿邪(湿気)が入り混じったタイプです。

発生機序は風寒タイプと変わりないですが、湿邪が加わったことにり、重だるさや鈍痛が多いです。尾てい骨や下肢に疼痛を伴うこともあります。雨天時など湿気が強いと増悪する特徴があります。

まぁ…このタイプでの急性腰痛は多くないかと。

中医内科学には「風寒タイプの腰痛を患った際に誤治をすると、慢性化させてしまい風寒湿痺を形成する」ともあります。

つまり風寒タイプの腰痛を放ったらかしにしたり、誤った処置で更に病を進行させてしまった場合に生じることがあるということです。

入り口としては風寒邪が関与する場合があるので紹介だけさせていただきました。



③瘀血(おけつ…血の滞り)が関与したものです。

「外傷の後に強い腰痛が生じ……腰部の運動障害を伴い、動かすと痛みが増強。」

これは外傷を伴うもの、いわゆる腰部捻挫に分類されるものが多いと思います。

「捻挫により経脈が気滞不通となり…体位変換、深呼吸、咳、くしゃみで強い指すような疼痛が生じる」

まさにこれがThe ぎっくり腰!って感じがしますよね。

この中医内科学では瘀血の範疇に分類されておりますが、重要なのは「経脈の気滞不通となり…」ここなのですよね。


原因は経脈の気滞不通であるからに(滞れば即ち痛む)、

瘀血でなくても、ストレスや運動不足などの諸々の理由で慢性的に気の停滞が強い人はこれを起こしかねないのです。


これが外傷もなく、特に負荷をかけたわけでもないのに

朝起きた直後やくしゃみ、普段の日常動作の中で不意に起こるぎっくり腰で一番多いものだと考えています。



【春前にぎっくり腰が多い理由】

さて先程、気の停滞により起こるぎっくり腰が多い、という話をしましたが…


東洋医学では肝の臓(※西洋医学のLiverと同義ではない)は

木の属性が有り、気を巡らせる働きがあります(=疏泄作用・条達作用などという)。

肝の臓は、西洋医学で言う自律神経系に近いような…そんな働き方もしてくれます。


東洋医学の思想の一つに”天人合一思想(自然と人間は一体である、という考え方)”がありますが、

木の属性=春が当てはまります。

つまり、春=肝の季節であり、上手く春らしい生活をしていれば肝の気は伸びやかになり、健やかに働いてくれますが、生活の乱れ(過度のストレス、寝不足、飲食の不摂生など)があると逆に肝の気は暴発してしまいます。


春に多い目眩や耳鳴り、頭痛、花粉症なんかはこういったメカニズムからくるものです。


これが西洋医学では「自律神経の乱れ」という言い方になるのでしょう。



この肝の臓の不調が、表裏関係にある胆の腑に影響し、

足少陽胆経という身体の側面に流れる経絡の不調和を起こし、大きな左右差を生む、或いは経絡の不通を起こす。

これが春先に多い急性腰痛のメカニズムであります。


年度末、年度始まりという時期は

忙しくなりがちで環境変化が大きい時期ですよね。

つまり人体へのストレス負荷が大きく関与しやすい時期です。


こういった背景があることで肝の臓あるいは胆の腑に負担がかかることで起こる急性腰痛・ぎっくり腰を訴える人が先月、うちでも多かったわけです。

9割がこれでしたね(一人だけ風寒からくる”ぎっくり背中”がいらっしゃいました)。


予防としてはやはり、日頃から適度な運動をすること

(いつも私がおすすめしている散歩は特に良いですよ)、

ストレスの発散できる趣味をもつこと、ですね。

できればその趣味も身体を動かすようなものが望ましいですけれども…

ご自身の気分がスカッとするものならそれでOKだと思います

(だからといって食べる!飲む!ばかりではダメですヨ。笑)。


西洋医学でも最近では腰痛の原因はストレス(自律神経の乱れ)にあった!

なんてことをたまに言っていることを耳にしますが、

ようやく西洋が東洋医学に追いついてきた、なんて思ったり…


これ以上は怒られそうなので辞めておきましょう(笑)




こういった理由をわかってくると、

春先に異常な事件が増えること、自殺が増えることなんかも、

妙に説明ができてしまうのですよね〜。

まぁ、この話は置いておきましょう。



気温は暖かくなってきましたが、朝晩の寒暖差がまだあったり、足元はまだ冷えやすかったりと…

風寒からくるパターンも侮れません(^_^;)


発散しつつ、冷えにも注意しながらもうしばらくは上手く過ごすようにしてくださいね〜!

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鍼灸 縁庵

住所:大阪府茨木市永代町6-19 近藤ビル402

電話番号:090-3890-4915

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