東洋医学の「血(けつ)」とは? 血の生成・働き・瘀血のしくみを 分かりやすく解説

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茨木_鍼灸東洋医学
脈診 養血

東洋医学の「血(けつ)」とは?|血の生成・働き・瘀血のしくみを分かりやすく解説

東洋医学では、
人体は「気」「血(けつ)」「津液(しんえき)」
3つの要素で構成されていると考えます。

前回は「気」の概念について解説しましたが、今回のテーマは「血(けつ)」です。

「血って、ようするに血液のことでしょう?」と思われるかもしれませんが、東洋医学の「血」は西洋医学の血液(Blood)よりも幅広い概念を持っています。

血はどこで作られるのか、どのような働きをしているのか、そして血が滞ると身体にどんな不調が起こるのか──。


今回はこの「血」について、できるだけ分かりやすく整理してお伝えしていきます。

───

気・血・津液 ─ 身体を構成する3つの要素

まずは全体像を簡単に確認しておきましょう。

気(き)── 生命エネルギーそのもの。身体を動かし、温め、守る力
血(けつ)── 全身を巡って臓腑や組織を栄養し、潤す物質
津液(しんえき)── 血液以外の体液の総称。関節液、組織液、涙、汗など

漢方の世界では「気・血・水(きけつすい)」という言い方をしますが、これは津液を広い概念で「水」と呼んでいるものです。

陰陽で捉えると?

この3つを陰陽の概念で分けると、気は「陽」血と津液は「陰」に位置づけられます1,2)

は動的なもの(太陽、温かさ、推進力)、

は静的なもの(月、潤い、物質)を象徴します。

血や津液のような液体(陰)は、それ自体では循環できませんが、気(陽)の推動作用を受けることで全身を巡ることができるのです。

つまり、陰と陽はお互いに欠けることなく、常に支え合っているということ。

この陰陽のバランスが崩れてくると…

  • 気の滞り(気滞:きたい)
  • 血の滞り(瘀血:おけつ)…あとで解説
  • 津液の滞り(痰飲:たんいん)
  • ある器官の栄養不足や過多(虚および実)


など様々な問題が生じ、不調を引き起こすと考えます。

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血はどこで作られるのか?

東洋医学では、血の生成には2つのルートがあると考えられています1,2)

ルート① 脾と心による生成

飲食物が消化・吸収されて得られる栄養エッセンス(水穀の精微)が胸中に集められ、心の臓の陽気(温める力)によって「血」へと変化します。

この過程で中心的な役割を果たすのが脾の臓です。

脾は飲食物から水穀の精微を作り出す「後天の本」と呼ばれる臓であり、血の材料を供給する重要な役割を担っています。

ルート② 腎精からの生成

腎の臓に蓄えられている腎精先天の精=根本的な生命エネルギー)が、命門の火(腎の臓の陽気)に温められて血へと変化します。

精は血へと変化し、ときには血が精へと変化することもあります。

このことを「精血同源(せいけつどうげん)」といいます。

つまり、血の生成に大きく関与する臓は「脾」「心」「腎」の3つです。

※西洋医学の視点でいえば、心臓(Heart)や肝臓(Liver)が血液に関与するのは理解しやすいですが、腎臓(Kidney)や脾臓(Spleen)が血液の生成に深く関わるという発想にはなりにくいかもしれません。

しかし東洋医学では、飲食から得る栄養(後天の精)や生命エネルギーの根源(先天の精)がなければ血は作れないと考えるのです。

───

血の働き ─ 栄養・潤い・精神の安定

生成された血は脈の中を巡り、全身の臓腑・組織を潤し栄養しています。この働きを「濡養(じゅよう)作用」といいます1,2)

血の主な働き

臓腑を栄養する── 五臓六腑の正常な機能を維持する
筋肉・関節・皮膚を潤す── 肌に艶と弾力を与え、目を潤し、四肢にしっかりと力を入れられるようにする
精神活動を安定させる── 血脈の調和は、思考力や感情の安定にも不可欠とされる

血が充実していれば、肌は艶やかで弾力があり、目には潤いがあり、四肢にはしっかりと力が入ります。
逆に血が不足(血虚)すると、顔色が悪い、肌が乾燥する、目がかすむ、疲れやすい、不眠やイライラ──

といった症状が現れやすくなります。

血の循環を支える臓腑

血が脈の中をスムーズに巡り、脈外に漏れ出ないよう調整するのにも、複数の臓腑が協力しています。

心の臓── 心気の推動作用(ポンプ作用)で血を全身に送り出す
脾の臓── 統血作用(血が脈から漏れ出ないように統括する力)
肝の臓── 蔵血作用(血を蓄え、必要に応じて全身への供給量を調節する力)

この3つの臓の連携によって全身の血量が適切に調節され、気血の陰陽バランスが保たれています1,2)

───

血が滞るとどうなる? ─「瘀血」という病理産物

何らかの原因で血の流れが滞ったり、脈の外に漏れ出てしまった血は、正常な機能を果たせなくなります。

これが「瘀血(おけつ)」と呼ばれる病理産物です1,2,3)

用語の整理
瘀血(おけつ)= 滞った血そのもの(病理産物)
血瘀(けつお)= 瘀血が存在している状態
少し紛らわしいですが、「モノ」と「状態」の違いだと思ってください。

瘀血が形成される原因

瘀血が生じるメカニズムにはいくつかのパターンがあります。

外傷・離経の血

骨折、打撲、切り傷、交通事故などの外傷により血が脈外に漏れ出し(離経の血)、体内に留まってしまうことで瘀血が形成されます。
内出血もこの範疇に含まれます。

気滞血瘀(きたいけつお)

ストレス感情の鬱滞により気の流れが滞ると、気に動かされている血の巡りも悪くなり、瘀血が形成されるパターンです。
デスクワークや精神的緊張が続く現代人には特に多い傾向があります。

血虚血瘀(けっきょけつお)

そもそも血の量が不足している(血虚)ために血流が滞り、瘀血が形成されるパターンです。
過度のダイエット産後、慢性疾患による消耗などが背景にあることが多いです。

寒凝血瘀(かんぎょうけつお)

冷え(寒邪)の影響を受けることで血管が収縮し、血の流れが凝滞して瘀血が形成されるパターンです。
寒邪には「凝縮させる」性質があり、冷えは瘀血の大きな原因のひとつです。

瘀血が引き起こす症状

瘀血はさまざまな症状の引き金になります1,3)

痛み── 強い関節痛(腰痛、五十肩など)、古傷の痛み、坐骨神経痛
婦人科系の不調── PMS、月経痛、月経周期の乱れ、不正出血。慢性化すると子宮筋腫やチョコレート嚢腫にもつながる場合があるとされます
皮膚の変化── 肌がくすんで暗い、色素沈着が起こりやすい、シミが目立つ

瘀血タイプの痛みの特徴

刺すような鋭い痛み(鈍痛ではなく、針で刺されるような質の痛み)
痛む場所が比較的固定的(移動しにくい)
夜間に痛みが増す傾向がある
舌が暗紫色っぽい、舌の裏の静脈が太い(東洋医学的な所見)

もちろん、すべての症状が瘀血だけで説明できるわけではありません。
実際には複数の要因が複雑に絡み合い、その比重によって症状の現れ方が変わってきます。

ただ、上記のような特徴が見られる場合は、瘀血が関与している可能性が高いと考えられます。

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瘀血を防ぐための養生法

血の滞りを予防するためには、日々の生活のなかでいくつかのポイントを意識することが大切です。

〜瘀血を防ぐ養生のポイント〜

身体を冷やさない── 冷えは血の巡りを悪くする大きな要因。腹巻き、足湯、温かい飲食を心がける
適度に身体を動かす── 長時間同じ姿勢を避け、ストレッチやウォーキングで気血の巡りを促す
ストレスを溜めない── 気滞は血瘀の原因に。深呼吸やリフレッシュの時間を確保する
血を巡らせる食材を取り入れる── サンザシ、酢の物、青魚(サバ・イワシ)、玉ねぎ、生姜、紅花茶など
血を補う食材も忘れずに── ほうれん草、にんじん、鶏レバー、プルーン、クコの実、黒ゴマなど
ケガをしたら放置しない── 外傷後の瘀血は後々の不調につながることがあります。医療機関で適切な処置を受け、必要に応じてリハビリや鍼灸を併用していただくことで、予後が良くなると考えています
───

まとめ ─ 血を知ることは、身体を知ること

東洋医学の「血」は、単なる血液ではなく、全身の臓腑・筋肉・皮膚・精神を潤し栄養する大切な物質です。

その生成には脾・心・腎が関わり、循環には心・脾・肝が協力しています。そして血が滞れば「瘀血」という病理産物が形成され、痛みや婦人科系の不調をはじめ、さまざまな症状の引き金になります。

大切なのは、西洋医学の視点も東洋医学の視点も、どちらかが正しくてどちらかが間違いということではなく、それぞれの良いところを見極めて活用していくことだと考えています。

気になる症状がある方、「もしかして瘀血かも?」と思われた方は、お気軽にご相談くださいね。


参考・引用文献

印会河・張伯訥 主編『中医基礎理論』人民衛生出版社 ─ 気・血・津液の生成と機能、陰陽学説
神戸中医学研究会 編著『中医学入門』医歯薬出版 ─ 血の生成・循環・病理(瘀血)の解説
趙金鐸 主編『中医症状鑑別診断学』人民衛生出版社 ─ 血瘀証の症候と鑑別

※本記事は東洋医学的な観点からの情報提供を目的としたものであり、
特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。
症状が気になる方は、医師や専門の鍼灸師にご相談ください。



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鍼灸 縁庵

住所:大阪府茨木市永代町6-19 近藤ビル402

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