五臓六腑について〜西洋医学の内臓学との違い〜

query_builder 2023/06/12
茨木_鍼灸東洋医学
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これまでのブログで、五臓という言葉を頻繁に使用していたと思います。


東洋医学では臓器はこういう考え方をして、

西洋医学のそれとは概念が違いますよ〜。

…と、大雑把にしか触れていなかったとおもいます。


気・血・津液(水)の概念については既に綴らせていただきましたので、

暫くは五つの臓と六つの腑について…いこうかなと。



【内臓学とは違う蔵象学】

今書いたように、人間の臓器には

五つの臓と六つの腑があります。


これを五臓六腑(ごぞうろっぷ)といいます。


染み渡るやつですね。笑



これらの臓腑組織、器官の生理機能、病理変化、

及び相互関係を研究する学問を、

東洋医学では【蔵象学(ぞうしょうがく)】といいます。

これは縁庵も採用している、中医学理論の中核をなすものであり、

病を見極めるために必要な基礎理論になります。


『類経』という古典の中に、

「象、形象也。蔵居于内、象見于外、故曰蔵象」とあります。


ここにも書いてあるように『蔵』は『臓』に通じ、

内臓のことを示し、『象』は『形象』のことで、

外に現れる生理あるいは病理現象のことを示します。


『史記・扁鵲倉公列伝』に

「病応見於大表」とあり、

大表(体表)上に人体内部の反応が反映されることが書かれています。



つまり…

私がベッドサイドであれこれ話を聞きながら、

脈を診たり、舌を確認したり、

あちこちのツボを触っているのは身体の中を診ている…

ということです。


だから聞きますよね?

「最近、お腹がゆるくないですか?」「便が固くないですか?」

「ちょっと…忙しくしてました?」「ちゃんと眠れてますか?」


そうしたら…

「えっ、なんでわかるんですか!?」「言われてみれば…!」


本人が気づいていなくても身体は正直なのでね…笑

こうやって教えてくれるのです。


尋ねてみて、思っていたのと違う回答が返ってきても

それはそれで「じゃあ別の理由で反応が出ているんだな」

と考えることができます。


丁寧に触るからこそ、観察するからこそ…

視えてくるものがあるわけですね。



【臓と腑の違いについて】

まず、大前提として臓腑とまとめて言いますが…

臓と腑は別物です。

”臓”と”腑”は表裏をなし、それぞれ相応し、補完しあっております。


臓は”陰”に属し、腑は”陽”に属します。


臓というものは、

”月(肉月)”に”蔵”で『臓』となります。

つまり溜め込んでおくもの


『類経』に

「満而不能實.」(満ちて実すること能わず)、

「蔵而不寫」(蔵して寫さず)、とあります。

これは、五臓は栄養物質(エネルギー)を貯蔵して漏らさない。

というようなことを言っています。

つまり作用では陰的作用が大きいです。



続いて…

腑というものは

”月(肉月)”に”府”で『腑』となります。

府は”あつまる”という意味があります。

集まるが出ても行きます。


『類経』には

「實而不能満也.」(実して満つること能わず)、

「寫而不蔵」(寫して蔵せず)、とあります。


飲食物を運搬し、その運行中に消化吸収、清濁を分別します。

そして要らないものは最終的に排出します。

動的で、常に動いているので陽的作用が強いと言えます。


このように臓と腑は対を成し、表裏関係を成しています。


五臓は

肝・心・脾・肺・腎の5つを示し

六腑は

胆・小腸・胃・大腸・膀胱に加え、

水分や栄養のルートでもある三焦を含めた6つを示します。


あわせて五臓六腑といいます。


この五臓と六腑は身体中に枝葉を伸ばしております。

それが経絡(けいらく)であり、

経絡上に点で現れるのが経穴(けいけつ=ツボ)です。


五臓六腑は根っこのようなもので、経絡や経穴が枝葉なので…

植物と同じで枝葉の状態を診ることで

生命そのものを診ることが、感じることできるのですね。


そこで栄養不足(気の停滞)が強く起こっているツボ、

気の歪みが大きく発生しているツボに鍼を、灸を施すことで

経絡を通じて、五臓六腑に働きかけることができるのです。


もちろん、単純に停滞しているところに…おりゃぁ!


ではなく、ツボの持つ1つ1つの効能を考えて、

使って意味があるのかどうか?ということも考慮し、

今、最も効果を示してくれるであろうツボを選択するのです。


そして…

人の持つ自然治癒力≒気の歪みを修復する力を

最大に引き出すため、うちは少数で勝負しているわけなのですね。

”数打ちゃ当たる”では、治そうとする力が…

それだけ分散してしまいます…。



【西洋医学の内臓学との違い】

ここまで読んでくださった方は…

すでに東洋医学の独自の考え方が、西洋医学とは

何となく違うということをわかってくださったかと思います。

(東洋医学を根本まで理解しようとしたら…

キリがないので大雑把でOKです。笑)


では、なぜ元々東洋医学中心であった日本が

今では西洋医学が主流になってしまったのでしょうか?


それは遡ること数百年前…江戸中期頃の話。

蘭学(オランダ医学)が日本に渡来して来たのはご存知でしょうか?

ペリーさんが来航されました…アレですね。


その際に、蘭学をどうしても日本語訳しないといけなかった。


そこで解体新書の著者である…

社会の教科書にも出てくる杉田玄白さん。


Liver→肝の臓、Kidney→腎の臓、Heart→心の臓…

とそれぞれ当てはめていきました。


西洋医学は解剖学中心の考え方なので…

臓器はそれぞれの役目が有り、

『内臓』としての働き・範疇から外にでることがありません。

それぞれ独立したものとして考えます。


ところが東洋医学では、

人体を解剖することはこれまでに滅多となかったために

何千年もの経験から、

この器官はこの臓腑と関連して…

この経絡・ツボはここの臓腑と繋がっている…

というように概念的な考えではありますが…

確かなものとして語り継がれていました。

ex)肝は眼、筋、爪を養う。腎は骨、耳、脳を養う。などなど。


それが、日本語訳する際にその概念が取っ払われてしまった。

そういったことがあったために

東洋医学と西洋医学の間でズレが生じるようになったのです。


そして明治時代に入り…戦争が繰り返させるようになり

外傷がかなり増えた世の中では、

手っ取り早く応急処置できるような外科療法が重宝されました。

そこから、東洋医学は段々と衰退していき…

昭和時代に消滅寸前までいったのですが…

その頃の湯液家(漢方医師)や鍼灸師が

東洋医学の復刻運動をしてくださったおかげで息を吹き返し…

現在では『伝統医学は真に医学である』と

WHOにも認定されるようにまでなりました。


我々は、何千年も語り継がれてきたこの『生きた医学』を、

先人の先生方が苦労を重ねて繋いで下さった、

この確かな医学を後世に残すことは義務、だとも言えます。


。。。とつい、アツくなってしまいましたが…笑



何となくでいいので、東洋医学とはどういったものか。

東洋医学と西洋医学はどう違うのか。

といったことを少しでも理解して頂き、

東洋医学の魅力が少〜しでも伝わったのであれば幸いですm(_ _)m



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鍼灸 縁庵

住所:大阪府茨木市永代町6-19 近藤ビル402

電話番号:090-3890-4915

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