生理(月経)を東洋医学と現代医学から考える

query_builder 2025/06/03
茨木_鍼灸東洋医学自律神経
月経について


既に女性疾患(生理痛|月経痛)について投稿してしまいましたが…

改めて、そもそも

「月経(生理)とはなにか」について触れたいと思います。


(こちらでつらい月経痛の原因と東洋医学的ケア|生理痛の対策を詳しく解説しています)

つらい生理痛の原因と対策|西洋医学と東洋医学から読み解く改善法


月経とは?-基本概念

世間的には”生理”といわれますが、

医学的には”月経”が一般的な名称です。


月経(生理)は女性の健康状態を表す大切なバロメーターでもあります。

毎月来る「生理痛」や

「経血量」「月経周期の乱れ(生理不順)」

などに悩まれる方も多いですが、

まずは「そもそも何のために起こるのか」を理解することが、セルフケアや適切な受診を考えるうえで重要かと思います。


「生理痛=面倒臭い、不必要だ」

と考える方もおられるかと思いますが、

これは女性にとって大切な現象ですので、

改めて考え直すきっかけになれたら幸いです。


また、女性のみならず、男性の目にもこの記事が止まることを願いつつ、投稿しております。


西洋医学的な月経の概要

西洋医学的には、月経は

「卵巣ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)」が中心となってコントロールされています。

以下、ポイントをまとめております。



  • 視床下部・下垂体・卵巣の連携

    視床下部からGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)が分泌される。

    下垂体前葉がそれを受けてFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)を分泌

    FSHは卵胞(卵子を含む袋状構造)を成長させ、エストロゲンを生成


    LHサージ(急上昇)によって排卵が誘発される


  • 月経周期のフェーズ

    月経期(Day1‐5程度)
    子宮内膜が剥がれ落ち、経血として排出される時期。卵巣内の卵胞も新たに成長し始めるタイミング。

    卵胞期(Day1‐14頃)
    下垂体から分泌されたFSHの作用で卵胞が成熟し、同時にエストロゲンが増加。
    エストロゲンにより子宮内膜が厚くなる。

    排卵期(Day14前後)
    LHサージが起こり、成熟した卵胞から卵子が飛び出す(排卵)。エストロゲンがピークに達し、その後プロゲステロンが増える。

    黄体期(Day15‐28頃)
    排卵後の卵胞が黄体に変わり、プロゲステロンを分泌。
    子宮内膜をさらに厚く維持し、受精卵が着床しやすい環境を整える。
    受精がなければ黄体が退行し、プロゲステロン・エストロゲンが急激に低下して子宮内膜剥離が起こり、再び月経期へ戻る。


  • ホルモンバランスの乱れと月経異常

    ストレス・過度のダイエット・甲状腺機能異常などでホルモンバランスが崩れると、無月経・稀発月経・過多月経・過少月経などが起こることがあります。


    若年者では思春期のホルモン調整が未熟であるために生理不順が起こりやすく更年期近くでは卵巣機能が低下して無排卵月経や更年期症状を伴うことがあります。



月経のしくみ


  1. 子宮内膜の周期的変化

    増殖期
    エストロゲンの影響で子宮内膜が厚く育つ。
    分泌期

    プロゲステロンの影響で内膜が着床に適した状態に整う。

    剥離期
    ホルモン急降下により内膜が剥がれ落ち、経血として排出される。


  • 経血の正体
    経血は血液のみではなく、剥がれた子宮内膜(細胞や粘液)、血液が混ざったものです。
    通常は数日で終わりますが、期間や量には個人差があります。


  • 生理痛(月経痛)の原因

    プロスタグランジンという物質が子宮収縮を促すために下腹部痛や腰痛、頭痛、吐き気を引き起こす。

    子宮内膜症子宮筋腫などの器質的疾患が元にある場合は重度の痛みを伴うことがあるので要注意。


正しい月経の仕組みを理解することで、

その月経状態は生理的なのか?病理的なのか?

を判断することができます。

※元来の体質もあるのでそれを考慮することを前提とします。


東洋医学的な月経の概要

東洋医学では、月経は単に子宮内膜の剥離という物理現象にとどまらず、

全身の「気血(きけつ)」「臓腑(ぞうふ)」の状態と密接に関係すると考えます。

とくに「天癸(てんき)」という概念が月経の本質を理解する上で鍵となります。


しかし、天癸と初潮・閉経の関係についてまで言及するとものすごい量になるので…今回は割愛します。


東洋医学における月経の捉え方

東洋医学では「気血」がスムーズに巡ることが

月経の健全さを支えると考えます。

主なものを以下にまとめております。


気血の流れと月経

そもそも気血とは何か?

東洋医学で月経を理解するためには「気血」という概念が欠かせません。


  • 気(き)
    身体を動かすエネルギーであり、さまざまな生体の機能の調整役となる。
  • 血(けつ)
    身体のさまざまな器官を潤し、栄養する物質。
    気によって運ばれることで身体内を巡る。


大雑把にいうとそれぞれこのような働きがあります。


月経は「血」が充満し、
ある時期に胞宮(現代医学の子宮の概念に相当)からスムーズに排出されるべきものですが…

気の滞り(気滞)血の不足(血虚)
あるいは瘀血(おけつ:血の滞り)などがあると、

周期不順痛み量の異常などが生じると考えます。


臓腑の関係

  • 肝(かん):
    気を巡らせる役割を持ち、月経リズムの調整に深く関与。
    「肝気疏泄(かんきそせつ)」が正常であればストレスなどに左右されずに安定した月経が迎えられる。


  • 脾(ひ):
    消化吸収をつかさどり、血を生む役割もある。
    脾が弱いと血虚(けっきょ:血の不足)になりやすく、月経量減少や貧血症状を伴うことがある。


  • 腎(じん):
    先天の精を貯蔵し、成長・発育・生殖に関与。
    天癸の源ともされ、月経開始(初潮)や閉経のタイミングに大きく関与する。

特にこれらの臓腑が深く関与すると考えます。

因みにですが、

婦人科疾患によく使われる『三陰交(さんいんこう)』のツボ。

これは

  1. 足厥陰肝経
  2. 足太陰脾経
  3. 足少陰腎経
    この3つの陰の経絡が交わる場所のため『三陰交』と名付けられています。
    ※ただし、このツボも「効くから使う」のではなく、その人の体質や証に合っていることが大切です。


代表的な弁証(べんしょう)分類

月経に異常がある場合、東洋医学では主に以下のような形で分類されることが多いです。


  • 気滞血瘀(きたいけつお)型

    ストレスやイライラで気の巡りが悪くなり、血の流れも滞る。
    症状例:月経前のイライラ、胸脇苦満(きょうきょうくまん:脇腹~胸あたりの張り)、痛み。


  • 血虚(けっきょ)型

    脾が弱いものに多く、血を作る力が不足している状態。
    症状例:月経量少、顔色蒼白、めまい、疲労感。


  • 瘀血(おけつ)型

    血がスムーズに巡らず、経血に塊が混ざる。
    症状例:経血に血の塊、刺すような痛み、腹部の硬さ・圧痛。


  • 腎虚(じんきょ)型

    天癸の源とされる腎精の不足による。
    症状例:初潮が遅い、閉経が早い、腰痛、耳鳴り、疲労感などを伴う。


これらは単体で関与する場合もあれば、

複合して関与している場合もありますので、

元々の体質や、他の愁訴と一緒に診て、判断する必要があります。


日常生活への影響とセルフケア


月経中のセルフケア(西洋医学的観点)



痛み対策(生理痛)

  • OTC(市販)鎮痛薬(NSAIDsなど)でプロスタグランジンを抑える

  • お腹や腰を温めることで血行を促進し、子宮の過剰な収縮を和らげる

  • 軽いストレッチやヨガなどで心身の緊張を緩める




過多月経や過少月経が気になる場合

  • 経血量が多すぎる・期間が長すぎる場合は、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮ポリープなどの疾患が隠れていることもあるため、婦人科受診を検討しましょう。

  • 経血が少なく、生理が極端に短い・遅れる場合は無排卵周期(月経様出血)や高プロラクチン血症、甲状腺異常などの可能性があります。




月経前症候群(PMS)対策

  • 栄養:ビタミンB6、マグネシウム、カルシウムを意識して摂る


  • 運動:軽い有酸素運動でストレスを軽減


  • 睡眠:十分な睡眠時間を確保し、ホルモンバランスを整える


月経中のセルフケア(東洋医学的観点)



冷えのケア

  • 足湯や温灸、薄手の腹巻きなどで下腹部や腰を温めることで気血の流れを促す。


  • 飲み物は温かいものを中心に、冷たい飲食は避ける。



食養生

  • 血を補う温性食品:
    黒ごま、ナツメ、生姜、鶏肉、鮭など。


  • 気を巡らせる食品:
    山椒、陳皮、香りの強い野菜などでストレス緩和。


  • 瘀血を予防する食品:
    玉ねぎやお酢、ココアなど血流を良くする食品も取り入れるとよいでしょう。




漢方活用

  • 月経痛が強い(瘀血型が疑われる場合)
    桂枝茯苓丸、血府逐瘀湯など。


  • 月経量が少ない・体力不足(血虚型が疑われる場合)
    当帰芍薬散、四物湯など。


  • イライラや胸脇苦満(気滞型が疑われる場合)
    逍遥散、柴胡疎肝散など。


  • 体が冷えやすく血が巡りにくい場合
    当帰四逆加呉茱萸生姜湯など温める漢方を検討。


漢方の活用は、身体・証に合っていれば効果を発揮しますが…

合っていない場合は火に油を注ぐことになる可能性もあります。

「漢方=安心・副作用がない」

と思われている方も多いかと思いますが、

正しい処方でなければいけません。


使用を開始する場合はまず、

「舌・脈をしっかり確認」し、体質から病態を把握してくれる漢方クリニックや治療院にかかりましょう。

(茨木市 鍼灸 縁庵も、しっかりと東洋医学的検査を行わせていただいております!)


生活習慣の調整

  • ストレスが溜まると「肝気鬱結(かんきうっけつ)」し、気滞が生じやすいため、適度な運動や趣味、呼吸法で心身の緊張をほぐすようにしましょう。


  • 規則正しい睡眠を心がけ、夜更かしは避けることで、しっかりと血や精を養うようにしましょう。


まとめ

本記事では「月経(生理)とは何か」を、西洋医学・東洋医学の両面から解説し、日常生活でできるセルフケア方法も紹介しました。

以下に要点をまとめます。


  • 月経の基本

    • 子宮内膜が剥がれ落ち、血液や粘液として体外へ排出される生理現象。


    • ホルモンバランス(エストロゲン・プロゲステロン)が正常に働くことで規則的に起こる。

  • 西洋医学的視点

    • 視床下部‐下垂体‐卵巣軸が月経周期をコントロール。


    • 初潮はホルモン調整が未熟な状態で起こり、閉経は卵巣機能低下で起こる。


    • 無理なダイエットやストレス、大量の運動がホルモンバランスを乱し、月経不順を招く。



東洋医学的視点

  • 月経は「天癸(てんき)」が胞宮(子宮)に到り、気血が十分であればスムーズに起こるとされる。


  • 「肝・脾・腎」のバランスを重視し、気・血・精の充実度で初潮・閉経、あるいは月経トラブルを説明する。


  • 弁証によって漢方を使い分け、冷えや瘀血、血虚、気滞などにアプローチする。



セルフケアのポイント

  • 西洋医学的には鎮痛薬、温めるケア(温罨法)、適度な運動、栄養バランスでホルモンバランスを整える。


  • 東洋医学的には冷え対策や温性食品、漢方、ストレスケアによって気血の流れを促進する。


いかがでしたでしょうか。
月経というものは本当に女性の生命というものと関わりが深く、1人1人の症状や、その重たさが違う、ということを知っていただけたらなと思います。


そして、「正常」と「異常」を知っていただき、おかしい場合には早期にその異常の原因を見つけることが、見え隠れする病気の早期発見につながるかもしれません。


女性のみならず、男性も「大切な人を守ることに繋がるんだ」という意識でこういった女性の身体の仕組みについて知っていただきたいなと思います。


月経について知ることは、「面倒な現象」として片付けるのではなく、自分の体と向き合う第一歩。


ぜひ、心と体の声に耳を傾けてみてください。


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鍼灸 縁庵

住所:大阪府茨木市永代町6-19 近藤ビル402

電話番号:090-3890-4915

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