「初潮と閉経のしくみ」 ―西洋医学×東洋医学(天癸)で学ぶ女性の節目―

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茨木_鍼灸東洋医学
初潮と閉経の仕組み

本記事では、前回の記事で触れられなかった

「初潮(しょちょう)」「閉経(へいけい)」について、

西洋医学的および東洋医学的(とくに「天癸(てんき)」の概念を中心に)両面から解説します。


初潮と閉経は、女性のライフステージを大きく分ける重要な節目であり、それぞれホルモンや生理学的なメカニズムだけでなく、東洋医学的には腎精(じんせい)や天癸といった特有な概念と深く結びついています。


読者の皆さまがご自身や大切な人の体の変化を理解しやすくなるよう、できるだけやさしい表現でまとめておりますのでご一読いただけると幸いです。



初潮(しょちょう)とは何か?


【西洋医学的メカニズム】

初潮とは、女性が人生で初めて月経(月経血)が来ることを指します。

一般的には9〜16歳の間に起こり、日本人女子の平均は12〜13歳ごろといわれております。

ここではまず西洋医学的な仕組みを解説します。


  • 視床下部‐下垂体‐卵巣軸(HPG軸)の覚醒
    視床下部からGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)が分泌されるようになる。
    GnRHは下垂体前葉に作用し、FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)を分泌させ、卵胞が成熟しエストロゲンが生成される。


  • エストロゲン分泌の増加と子宮内膜の発育
    エストロゲン量が上昇すると子宮内膜が「増殖期」として厚くなる。
    排卵が始まり、排卵後に黄体が形成されてプロゲステロンを分泌するサイクルが成立する。


  • 初めての月経(初潮)
    初潮は最初の 1~2 サイクルを経て、子宮内膜が着床の準備をする期間(増殖期→分泌期)が終わり、受精しない場合に子宮内膜が剥がれ落ちて月経血として排出されるタイミングで起こる。
    初潮直後は無排卵月経や月経不順となりやすいです。


  • 初潮の時期を左右する要因
    遺伝
    母親が初潮が早い場合、娘も早い傾向がある。
    栄養状態・体脂肪
    十分な栄養と適正な体脂肪率が初潮を促す。逆にダイエットや低体重は遅延要因。
    運動量
    激しい運動を続けるとホルモン分泌が抑制され、初潮が遅れることがある。
    心理的ストレス:
    強いストレス状態は視床下部からのGnRH分泌を抑え、初潮を遅らせる可能性がある。


【東洋医学的メカニズム(天癸との関係)】

東洋医学では、初潮は腎(じん)に宿る「精(せい)」が充実して天癸(てんき)を生じることで初潮が始まると考えられます。
ここでは「天癸」の概念と初潮との関連を説明します。



東洋医学における「腎精」と「天癸」

  • :成長や生殖、老化をつかさどる「先天の精(腎精)」を蔵す。
    腎は生命力・生殖機能の源とされます。


  • 天癸:「天の癸(みず)」すなわち「天から降り注ぐ潤い(水)」を指し、女性の場合は月経を起こす原動力。
    腎精が成熟すると天癸が形成され、胞宮(子宮)に上衝し、一定時期に下行することで初潮を迎えます。


初潮=天癸の発動と言えるでしょう。



【古典『黄帝内経』上古天真論篇による七年サイクル】

東洋医学の古典『黄帝内経』「上古天真論篇」には、
以下のように七年ごとの女性の体の発育・衰退が記されています。


「女子七歳.腎氣盛.齒更髮長. 二七而天癸至.任脉通.太衝脉盛.月事以時下.故有子. 三七腎氣平均.故眞牙生而長極. 四七筋骨堅.髮長極.身體盛壯. 五七陽明脉衰.面始焦.髮始墮. 六七三陽脉衰於上.面皆焦.髮始白. 七七任脉虚.太衝脉衰少.天癸竭.地道不通.故形壞而無子也.

ここでは「二七(2×7=14歳頃)で天癸至(天癸が到る)し、初潮を迎える」と示されています。

この古典的な記述は、東洋医学の理論的根拠となるものですが、 現代の初潮年齢(平均12〜13歳前後)ともおおむね一致するところが面白いポイントですね。


閉経(へいけい)とは何か?

【西洋医学的メカニズム】

閉経とは、最後の月経から1年以上経過し、以後月経が完全に止まった状態を指します。
日本人女性の平均閉経年齢は50〜51歳前後ですが、個人差があります。


  • 卵巣内の卵胞数減少と卵巣機能低下
    女性は胎児期に約600万個の原始卵胞を持っていますが、生まれたときには約20万〜30万個に減少。
    月経を繰り返すごとに数が減少し、閉経前には数千個程度にまで減ります。


  • ホルモン変化とエストロゲン低下
    卵胞数の減少によりエストロゲン(エストラジオール)の分泌が低下する。
    一方でFSHやLHは「女性ホルモンが不足している」というシグナルとして上昇するが、卵胞が少ないため十分に産生できません。
    その結果、月経が不規則になり(無排卵月経や稀発月経)、最終的に閉経となる。


  • 更年期症状の出現
    ホットフラッシュ(ほてり):
    エストロゲン低下で体温調節が乱れ、一過性のほてり・発汗が起こる。
    睡眠障害・不眠
    ほてりや寝汗で不眠を誘発することがある。
    精神症状
    イライラ、抑うつ、不安感などホルモン変化がもたらす心の不調。
    骨密度減少
    エストロゲンには骨を守る働きがあり、閉経後に骨粗しょう症のリスクが高まる。


  • 閉経後の注意点
    骨粗しょう症の予防
    カルシウム・ビタミンDの摂取と適度な運動を行いましょう。
    生活習慣病リスク
    エストロゲン低下により脂質代謝やインスリン抵抗性が変化し、高血圧・糖尿病・高脂血症のリスクが上がる。
    ホルモン補充療法(HRT)
    必要に応じて医師と相談し、更年期症状が生活の質を大きく下げる場合にはHRTを検討。


【東洋医学的メカニズム(天癸の枯渇と腎虚)】

東洋医学では、閉経は「腎精が枯渇し、天癸が尽きる」現象ととらえます。
現代医学で語られる「卵巣機能低下」に相当しますが、言葉や捉え方が異なります。


閉経は「天癸の枯渇」といえるでしょう。といえるでしょう。

腎には「先天の精」が貯蔵され、精は成長・生殖のエネルギー源となります。
若いころは腎精に余力があり天癸を定期的に生み出せるが、年齢とともに腎精は消耗し、天癸を生成できなくなると閉経を迎えます。


腎精が不足して腎の機能が低下した状態を「腎虚」といいます。


腎虚には以下のタイプがあります。

  1. 腎陰虚:腎陰(潤い・栄養)が不足し、ほてり・寝汗・口渇が強い状態。
  2. 腎陽虚::腎陽(温エネルギー)が不足し、冷え・倦怠感・腰膝酸軟が顕著。
  3. 腎気虚::腎の機能エネルギーが不足し、疲れやすさ・息切れ・頻尿が見られる。


生活習慣の工夫

  • 散歩など適度な運動で気血を巡らせる。
  • 腹巻きやレッグウォーマーで下半身を暖め、暖かい飲み物を中心にする。
  • 規則正しい睡眠で腎精を養い、就寝前に軽く下腹部を温める。
  • 深呼吸や瞑想などで肝気鬱結を防ぎ、心身のバランスを整える。

日頃から腎を養う意識を持つことが大切です。


初潮前後のケア

月経不順や過度な痛みへの対応

初潮直後はホルモンリズムが不安定なため、

無排卵月経や月経不順が起こりやすいです。


  • 栄養バランスと適正体重の維持
    良質なタンパク質・ビタミン・ミネラルを意識し、無理なダイエットや偏食は避けましょう。


  • BMIが低すぎる場合(18以下など)
    ホルモン分泌が抑制される可能性があるため、専門家と相談をして栄養指導を受けましょう。


  • メンタルケア・セルフイメージの醸成
    初潮の時期(思春期)は身体に大きな変化をもたらすため、親子や専門家が開かれたコミュニケーションを図ることが大切です。

    正しい知識を事前に持つことで、恐怖感や誤解を防ぐことができます。


閉経前後のケア

更年期症状の自己管理

ホットフラッシュには室温調整やこまめな水分補給、通気性のよい衣類が有効です。


  • 精神状態(メンタル面)の安定:
    イライラや不眠には深呼吸・ストレッチ・アロマテラピーなどリラックス法を取り入れる。


  • 骨密度の維持:
    閉経後は骨の破壊が優位になるため、カルシウム・ビタミンDの摂取と適度な負荷運動を行う。
    必要に応じて婦人科や整形外科で骨密度検査を受けましょう。


  • 生活習慣病の予防:
    定期的な健診を受け、血圧・血糖・脂質値をチェックする。
    バランスのとれた食事・適度な運動・禁煙・節酒を心がけましょう。


まとめ

本記事では、「初潮」と「閉経」という女性の人生における二大節目について、西洋医学的および東洋医学的に解説しました。

ポイントを振り返ると以下の通りです。


  • 初潮
    西洋医学的見解
    HPG軸の覚醒により排卵可能な状態となり、子宮内膜が剥がれることで初潮が起こる。
    東洋医学的見解
    腎精が充実して天癸が発生し、胞宮に上衝して初潮を迎える。


  • 閉経
    西洋医学的見解
    卵胞数の枯渇によりエストロゲン分泌が低下し、1年以上月経が停止する。
    東洋医学的見解
    腎精が枯渇し天癸が尽きることで閉経となり、腎虚タイプ(腎陰虚・腎陽虚・腎気虚)によってその時に起こる症状が異なる。


  • セルフケアのポイント
    初潮期には適切な栄養、冷え対策、メンタルサポートが重要。
    閉経期には骨密度維持、生活習慣病予防、漢方や経穴を活用した東洋医学的ケアが有効。

    初潮も閉経も、女性のライフステージにおいて心身に大きな変化が伴う節目です。

    どちらの時期でも、自身の体調や不安を正しく把握し、必要に応じて専門家に相談するとよいでしょう。
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鍼灸 縁庵

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