「吐き気が続く…その原因はストレス?それとも胃の不調?|“嘔気”を西洋医学と東洋医学の視点からやさしく解説」

query_builder 2025/05/20
茨木_鍼灸東洋医学自律神経
嘔気 悪心 吐き気

【嘔気とは?】

「なんとなく吐き気がする」

「胃のあたりがムカムカする」

こうした“嘔気(おうき)”の症状は、

多くの方が一度は経験したことがあるのではないでしょうか。


嘔気とは、吐き気はあるけれど、

まだ嘔吐には至っていない状態を指します。


筆者の鍼灸院である鍼灸 縁庵にも、

「朝からずっとムカムカして何も手につかない…」

「病院では異常なし。でも気持ち悪さが続いてつらい」

といったお悩みを抱える方が多く訪れます。


嘔気は、検査で異常が出にくいのに辛い…

というやっかいな症状です。


最近では器質的には異常は認められないが症状がある場合は「機能性ディスペプシア」と診断が下りる場合も多いようです。


そんなときこそ、

東洋医学の視点が助けになることがあります。

今回はこの「嘔気」について、

西洋医学と東洋医学の両方の視点から解説してみましょう。


【西洋医学的見解】

●嘔気の定義とメカニズム

嘔気は、中枢神経系(延髄にある嘔吐中枢)が刺激されることで起こる嘔吐の「前駆症状」です。


日本緩和医療学会では

「消化管の内容物を口から吐出したいという切迫した不快な感覚」

と定義されており、


日本癌治療学会『制吐薬適正ガイドライン』では

「悪心」と記載されています。


吐き気を感じるとき、実際には

体内でさまざまな神経が複雑に関与しています。


● 主な原因

嘔気を引き起こす原因は大きく以下のように分類されます。

  • 消化器系の異常
    胃炎、胃潰瘍、胃がん、胃食道逆流症(GERD)、胆嚢炎、腸閉塞など
  • 中枢性の異常
    片頭痛、脳腫瘍、脳出血、メニエール病、脳震盪など
  • 代謝・内分泌の異常
    腎不全、糖尿病性ケトアシドーシス、妊娠(つわり)、甲状腺機能異常など
  • 薬剤性
    抗がん剤、抗生物質、鎮痛薬、抗うつ薬など
  • 心理的要因
    ストレス、心因性嘔気、神経性食思不振症(拒食症)など
  • 内耳・前庭系の異常
    乗り物酔い、良性発作性頭位めまい症(BPPV)など


● 治療法

原因に応じて以下のような治療が選ばれます。

  • 抗ヒスタミン薬、制吐薬(ドンペリドン、メトクロプラミドなど)
  • 原因疾患の治療(胃薬、抗菌薬、降圧薬など)
  • 食事指導・水分補給・安静など


【東洋医学的見解】

東洋医学では「嘔気」という言葉は
「嘔」、「悪心(おしん)」といった用語で
吐き気やムカつきの症状としてよく登場します。

これらは臓腑の失調気の逆流(気逆)などによって説明されます。

『景岳全書・雑證謨』(けいがくぜんしょ・ざっしょうぼ)
には
「悪心といえども、実は胃口の病にして、心の病に非るなり」とあり、

悪心と書くが、心の病ではありません。

というような記載もあります。


●主な原因と弁証

原因と弁証(見立て)は主にいあkのようなものがあります。

  • 胃熱
    油膩物や味の濃いものの過食などの飲食の不摂生や暑熱に傷られることにより、胃に熱が篭ることで嘔気が出現する。
    口臭が気になったり、胸焼け、口渇(喉の渇き)、便秘を伴うことがある。


  • 肝気犯胃(かんきはんい)
    怒り・ストレスなどにより「肝」が失調し、肝気が胃を攻撃する(犯す)ことで胃の働きが乱れ、嘔気を引き起こします。
    イライラにより症状が増悪したり、胸脇の張り(胸脇苦満)、ゲップや溜め息などが特徴的です。


  • 痰湿内停(たんしつないてい)
    飲食の不摂生や湿気の多い環境による影響を受け体内に余分な湿気(湿邪)がたまり、痰濁となって胃気を阻滞し、気がうまく降りずに嘔気を生じます。
    めまい、身体の重だるさ、舌苔が厚くべっとり(厚膩)になる傾向。


  • 脾胃虚弱(ひいきょじゃく)
    飲食の不摂生や慢性疲労などにより「脾胃(消化器)」が弱ってしまい、気を下ろす力が失われて嘔気が生じます。
    食欲不振、倦怠感、軟便、舌質淡、脈が虚弱などの所見がみられます。


  • 胃寒(いかん)
    冷飲食の摂りすぎ、寒邪の侵入などにより胃に寒(冷え)が入り、嘔気が発生する。
    冷え、腹痛、よだれ・唾液過多などが特徴。


●治療方針(治則)

上記弁証の治療方針としては鍼灸施術や漢方を用いて以下のような方法をとります。

  • 胃熱:「清熱降逆(こうぎゃく)」
    胃の熱を冷まし、気を下げて嘔を止める。


  • 肝気和胃:「疏肝和胃(そかんわい)」
    肝気を疏通させ、胃の機能を調和させる。


  • 痰湿内停:「化痰除湿」
    痰湿を取り除く。


  • 脾胃:「健脾益気」
    脾胃を補い、正気を高める。


  • 胃寒:温中散寒
    脾胃を温めて寒さを取り除く。


鍼灸や漢方では、単に“吐き気”だけを追うのではなく、
全身の状態や体質を見極めながら、

『気の流れ』『臓腑の働き』『冷えと熱のバランス』を

整えることで改善を図ります。

嘔気の“原因”は一人ひとり異なるため、

それに応じた弁証(現在の状況における見立て)と

治療が重要です。


同じ嘔気でも、原因は別々にあると考えるわけですね。


当院では、このようなさまざまな方面からの

“気の乱れ”に注目し、

脈・舌・腹診などの東洋医学的な診立てを行い、

鍼灸施術や養生法を提案しています。


”慢性的な吐き気・ムカムカがあるけど原因がわからない方”

”病院では「異常なし」と言われてモヤモヤしている方”

”ストレスや体の冷えからくる不快感を改善したい方”


上記のようなお悩みをお持ちの方に

「このような可能性もあるんだ」と

ぜひ知っていただきたく思います。


【まとめ】

嘔気という一つの症状でも、

西洋医学では「構造的な異常や神経系の反応」として、

東洋医学では「気の流れや臓腑の調和の乱れ」として捉えます。


私自身は、どちらの視点も大切だと考えています。


まずは西洋医学的な検査によって病状を明確にし、

大きな異常がない場合には東洋医学的なアプローチを活用していく。


そのような“二つの医学のいいとこ取り”が、

現代人にとっての新しい選択肢となるのではないでしょうか。

身体の声に耳を傾け、

適切な視点から原因にアプローチすることが、

改善への第一歩だと考えています。

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鍼灸 縁庵

住所:大阪府茨木市永代町6-19 近藤ビル402

電話番号:090-3890-4915

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