更年期障害と漢方|体質タイプ別の選び方

query_builder 2026/05/29
茨木_鍼灸東洋医学自律神経
更年期 漢方

「更年期の不調に漢方が良いと聞いたけれど、どれを選べばいいの?」
「ドラッグストアに並んでいる漢方、自分に合うものはどれ?」
——そんなお声をよく耳にします。

結論からいえば、更年期障害の漢方は
「症状が似ていても、体質によって選ぶものが変わる」のが大原則です。
合わないものを飲み続けても効果が出ないばかりか、体調が崩れることもあります。
本記事では、東洋医学の体質タイプ別に漢方の考え方を整理し、代表的な処方とその特徴をご紹介します。

👉 更年期障害とは?原因・症状・治療を東洋医学で解説もあわせてご覧ください。

👉 更年期障害の症状一覧|ほてり・不眠・気分の落ち込みを東洋医学で解説もあわせてご覧ください。


更年期障害と漢方の関係

更年期障害の治療として、西洋医学ではホルモン補充療法(HRT)や低用量ピル、抗うつ薬などが用いられます。

一方、漢方薬は「体全体のバランスを整えながら、不調の根本にアプローチする」という東洋医学的な考え方を背景に持ちます。

更年期のような「複数の症状が複合的に重なる状態」には、漢方のアプローチが合うことも少なくありません。

日本女性医学学会の「女性医学ガイドライン 更年期以降編」でも、HRTが使いにくい方や軽〜中等度の症状の方に対して漢方薬が選択肢のひとつとして挙げられています。

また更年期障害に用いられる漢方薬の多くは、医師から保険適用で処方してもらうことも可能です。


ただし、漢方は「飲めば何でも治る」万能薬ではありません。

「体質に合った処方を、正しく使い続けること」が効果の前提です。自己判断での服用はリスクを伴いますので、必ず医師・薬剤師にご相談の上で使用してください。


体質別の漢方アプローチ

東洋医学では更年期障害を「腎(じん)」の衰えを根本に置きつつ、体質によって症状の出方が異なると考えます。

主に4つのタイプに分けて漢方を選択します(詳しいタイプ解説は更年期障害の親記事をご参照ください)。

腎陰虚タイプ ほてり・のぼせ・寝汗・口の渇き・イライラが中心
潤いを与えるエネルギー(陰)が不足し、相対的に熱がこもる状態です。

冷却水が減ってエンジンがオーバーヒート気味、というイメージです。

漢方では「滋陰補腎(じいんほじん)」を基本として、六味地黄丸(ろくみじおうがん)や知柏地黄丸(ちびゃくじおうがん)が参考にされます。

腎陽虚タイプ 冷え・むくみ・疲労感・気力の低下・頻尿が中心
身体を温めるエネルギー(陽)が不足した状態です。

暖房が壊れた部屋にいるようなイメージです。

漢方では「温腎補陽(おんじんほよう)」を基本として、八味地黄丸(はちみじおうがん)や真武湯(しんぶとう)が参考にされます。

心腎不交タイプ 不眠・動悸・不安感・集中力低下・健忘が中心
腎と心(精神)のつながりが断たれた状態で、建物の上下階をつなぐ通路が途切れたようなイメージです。

漢方では「交通心腎(こうつうしんじん)」を基本として、加味帰脾湯(かみきひとう)や天王補心丸(てんのうほしんたん)が参考にされます。

肝気鬱結タイプ イライラ・情緒不安定・のぼせ・肩こり・月経不順が中心

ストレスで「肝」の疏泄機能が乱れ、気の流れが詰まった状態です。

川の流れが交通渋滞しているようなイメージです。

漢方では「疏肝理気(そかんりき)」を基本として、加味逍遙散(かみしょうようさん)や柴胡疏肝散(さいこそかんさん)が参考にされます。


代表的な3処方について

更年期障害に対して処方されることが多い漢方として、「女性の三大漢方」とも呼ばれる3処方があります。

それぞれの特徴と、医療用添付文書に記載された効能を確認しておきましょう。

ただし、同じ処方でも体質によって合う・合わないがあるため、必ず専門家にご相談ください。


当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

医療用添付文書には「体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などがあるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害」などと記載されています。

血と水(津液)の両方を補い調整する処方です。

冷え・むくみ・貧血気味・疲れやすいという体力がやや弱めの血虚・水毒タイプに向いています。

腎陰虚〜腎陽虚の要素が混在し、かつ血も不足している方に処方されることが多いです。


加味逍遙散(かみしょうようさん)

医療用添付文書には「体質虚弱な婦人で肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状、ときに便秘の傾向のある次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症」と記載されています。

肝の気を巡らせながら、血と脾(消化器)を同時に補う処方です。イライラ・精神不安・肩こり・疲れやすさが重なる肝気鬱結タイプに向いています。更年期の精神症状に広く用いられる処方で、心腎不交の要素がある方にも使われることがあります。


桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

医療用添付文書には「体格はしっかりしていて赤ら顔が多く、腹部は大体充実、下腹部に抵抗のあるものの次の諸症:更年期障害(頭痛、めまい、のぼせ、肩こり等)、月経不順、月経困難」などと記載されています。

血の滞り(血瘀)を解消する処方で、上記2処方と比べると体力が比較的あり、のぼせ・肩こり・頭痛・手足の冷えが強い血瘀タイプに向いています。

ほてりが強く下腹部が張りやすい方に処方されることがあります。

漢方を使う際の注意点
同じ更年期の症状でも、上記のどの処方が合うかは個人の体質・体力・他の症状によって異なります。

市販品で試す場合も、2〜4週間使って変化がなければ処方が合っていない可能性があります。

また、漢方薬には副作用がないわけではありません(甘草を含む処方では偽アルドステロン症のリスクなど)。

必ず添付文書をよく読み、医師・薬剤師にご相談の上でご使用ください。


縁庵での鍼灸アプローチ

鍼灸 縁庵は漢方薬を処方する機関ではありませんが、東洋医学的な弁証(体質の見立て)という点では、漢方と鍼灸は同じ理論の上に立っています。

「今の体質は腎陰虚なのか、肝気鬱結なのか」を丁寧に読み解くのが、縁庵での診察の出発点です。

漢方を服用しながら鍼灸を並行して受けることで、相互に体質改善を後押しすることが期待できます。

特に「漢方を飲んでいるけれどなかなか変化が感じられない」という方が来院されることも多く、鍼灸で気血の流れを直接整えることで変化を実感されるケースがあります。

更年期の不調・漢方についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
体質の見立てから、ご自身に合ったアプローチをご提案します。

▶ ご予約・お問い合わせはこちら


まとめ:体質を知ること

更年期障害の漢方は体質で選ぶ
腎陰虚(ほてり・乾燥)

→ 六味地黄丸 / 腎陽虚(冷え・むくみ)→ 八味地黄丸 / 心腎不交(不眠・不安)→ 加味帰脾湯 / 肝気鬱結(イライラ・肩こり)→ 加味逍遙散。

症状が似ていても体質が違えば選ぶ処方が変わります。

女性の三大漢方の目安
当帰芍薬散(冷え・貧血・疲れやすい)、加味逍遙散(イライラ・精神不安・肩こり)、桂枝茯苓丸(のぼせ・肩こり・体力が比較的ある)。

いずれも更年期障害の効能が添付文書に記載されています。

大切なこと
漢方薬は体質に合わせて選ぶこと、必ず医師・薬剤師に相談すること、効果を感じるまである程度の継続が必要なこと(目安2〜3ヶ月)。鍼灸と組み合わせることでより体質改善が期待できます。

「どれが自分に合うか分からない」

「漢方を飲んでいるけれど変化がない」

——そんなときこそ、体質の見立てから始めてみましょう。

一緒に相談しながら、丁寧に整えていきます。


参考文献

1) 日本女性医学学会 編『女性医学ガイドライン 更年期以降編 2019年度版』金原出版, 2019年.
2) ツムラ当帰芍薬散エキス顆粒(医療用)添付文書 — 効能又は効果記載.
3) ツムラ加味逍遙散エキス顆粒(医療用)添付文書 — 効能又は効果記載.
4) ツムラ桂枝茯苓丸エキス顆粒(医療用)添付文書 — 効能又は効果記載.
5) 張伯臾 主編『中医内科学』上海科学技術出版社, 1988年 — 弁証分型の理論的根拠.

----------------------------------------------------------------------

鍼灸 縁庵

住所:大阪府茨木市永代町6-19 近藤ビル402

電話番号:090-3890-4915

----------------------------------------------------------------------