痙攣(けいれん)とは ~搐惕(ちくてき)・抽搐(ちゅうちく)~

query_builder 2026/02/16
茨木_鍼灸東洋医学自律神経
痙攣 画像

突然、手足や全身がガクガクと震え出したり、
筋肉がつって動かせなくなったりする「痙攣(けいれん)」。
乳幼児で発症するケースも多く、そうなればご本人だけでなく…
そばにいるご家族にとっても不安になる症状です。

痙攣には、脳の異常による重篤なものから、
こむら返りのような日常的なものまで幅広い種類があります。
このページでは、痙攣の種類と原因、受診の目安を
西洋医学の視点から整理したうえで、
東洋医学では痙攣をどのように捉え、
どのようなアプローチがあるのかをご紹介します。


【 西洋医学的な解説 】

1. 痙攣の基本

1-1. 痙攣とは

痙攣とは、自分の意思とは無関係に筋肉が急激に収縮する状態の総称です。
全身に起こることもあれば、体の一部だけに起こることもあります。

日常会話で「けいれん」と一口に言っても、
実際にはいくつかの異なるタイプが含まれています。
主な区別を知っておくと、状況の理解に役立ちます。

1-2. 痙攣のおもなタイプ

タイプ

特徴

代表例

Convulsion

(コンバルジョン)

脳の異常な電気的興奮により起こる発作性の全身または部分的な筋収縮

てんかん発作

熱性けいれん

Spasm

(スパスム)

比較的軽い、局所のピクつき・ひきつり。痛みを伴わないことが多い

まぶたのピクピク

顔面痙攣

Cramp

(クランプ)

局所の筋肉が強く収縮し、痛みを伴うことが多い

こむら返り

(ふくらはぎの痙攣)

重要な補足:てんかん発作=必ず痙攣とは限りません。
 意識がぼんやりするだけでガクガクしないタイプの発作もあります。

2. 痙攣の原因

2-1. 脳が原因の痙攣

脳内の神経細胞が異常な電気的興奮を起こすことで、発作的に筋収縮が起きます。
原因としては以下のようなものが挙げられます。

  • てんかん(脳の慢性的な電気的異常)
  • 脳血管障害(脳出血・脳梗塞)
  • 脳腫瘍、頭部外傷
  • 脳炎・髄膜炎(脳の感染症)
  • 代謝異常(低血糖、電解質異常など)
  • 薬物中毒・アルコール離脱

2-2. 小児の熱性けいれん

熱性けいれんは小児期に最も多いけいれんで、
生後6か月から5歳の子どもの2〜5%に起こるとされています。
発熱に伴って起こり、多くは数分以内に自然に止まります。
ピークは生後12〜18か月です。

熱性けいれんの約3分の1は再発しますが、
多くの場合は良性の経過をたどり、後遺症を残すことは稀です。
ただし、初回の場合は髄膜炎など重い病気を除外する必要があるため、
医療機関の受診が推奨されます。

2-3. こむら返り・熱中症に伴う痙攣

熱中症の文脈で使われる「熱けいれん」は、全身のてんかん性痙攣ではなく、
発汗による塩分喪失に伴うこむら返りのような局所筋痙攣を指すことが一般的。
ただし重症の熱射病では意識障害やてんかん性の痙攣を合併することがあり、
全身状態の評価が重要です。

2-4. その他の原因

  • 妊娠高血圧腎症に伴う子癇(しかん)発作
  • 過換気症候群(過呼吸)に伴うテタニー(手足の硬直)
  • 心因性非てんかん発作(PNES)

3. 疫学(かかりやすさの特徴)

3-1. てんかん

項目

内容

世界の患者数

約5,200万人(2021年GBD Study)

年間発症率

先進国で人口10万人あたり約4060人、発展途上国ではさらに高い

生涯で1回以上の痙攣を経験する確率

約8%

年齢分布

U字型の二峰性分布:乳幼児と高齢者でピーク

男女比

男性がやや多い
(男性の方がリスク因子への曝露が多いことが一因)

薬物治療で発作コントロールできない割合

30%(薬剤抵抗性てんかん)

 

3-2. 熱性けいれん

項目

内容

発症頻度

小児の2〜5%(欧米)。日本では約8%とやや高い報告もある

好発年齢

生後6か月〜5歳。ピークは1218か月

男女比

男児がやや多い(約1.6:1)

再発率

初回後約33%1歳未満での初発では50%

てんかんへの移行リスク

単純型で1〜2%、複雑型で6〜8%(一般人口の約0.5〜1%と比較)

季節性

冬季にやや多い(ウイルス感染症の流行時期と一致)

 

4. リスクファクター(危険因子)

4-1. てんかん・脳由来の痙攣

  • 脳血管障害(脳卒中):とくに高齢者のてんかんの主要な原因。
    脳出血・脳梗塞後に痙攣を発症するリスクがあります。
  • 頭部外傷:外傷の重症度に応じてリスクが上昇します。
    男性に多い傾向があります。
  • 中枢神経系の感染症:髄膜炎・脳炎。
    発展途上国では寄生虫感染(神経嚢虫症など)も重要なリスク因子です。
  • 周産期の異常:出生時の低酸素・脳損傷は、小児てんかんの重要な原因の一つです。
  • 遺伝的素因:家族歴がある場合、リスクが上がります。
    特発性てんかんの多くは遺伝的要因と環境要因の複合です。
  • 睡眠障害:睡眠不足は発作の閾値を下げることが知られています。
  • アルコール・薬物:アルコール離脱は痙攣の重要な誘因です。

4-2. 熱性けいれんのリスク因子

  • 家族歴:熱性けいれんまたはてんかんの家族歴がある場合、
    25〜40%の小児に家族歴が認められます。
  • ウイルス感染:ヒトヘルペスウイルス6型(突発性発疹)、インフルエンザ、
    アデノウイルス、パラインフルエンザなどが代表的な誘因です。
  • 発熱の高さ:体温の高さが発作リスクに関連します
    (急激な体温上昇ではなく、高さそのもの)。
  • 神経発達の遅れ:脳性麻痺や発達遅滞のある小児ではリスクが上がります。
  • 低亜鉛・低鉄:亜鉛や鉄の不足が発作リスクを高める可能性が報告されています。
  • 母体の喫煙・ストレス:周産期の環境因子として報告されています。

5. 受診の目安と応急対応

5-1. すぐに救急要請を考える状況

  • 痙攣が5分以上続く、または繰り返して意識が戻らない(けいれん重積の目安)
  • 成人の初めての痙攣
  • 妊娠中の痙攣
  • 頭部外傷後、糖尿病治療中、薬物・毒物の可能性がある場合
  • 強い頭痛、片麻痺、高熱+項部硬直(首の後ろの硬さ)を伴う場合

5-2. その場でできること

  • 安全確保:周囲の危険物を避け、頭の下にクッションなどを入れる。
  • 締め付けをゆるめる:襟元やベルトなど。
  • 時間を測る:開始と終了の時刻を記録する(医師への重要な情報になります)。
  • 発作後は横向き(回復体位):吐物による窒息のリスクを減らす。
  • やってはいけないこと:押さえつけない。口に物を入れない
    (舌を噛み切る心配は実際にはほとんどありません)。

6. 西洋医学的な治療の大枠

6-1. 急性期(発作が起きているとき)

救急の現場では、まず呼吸・循環・意識の安定を図りながら、
低血糖や電解質異常、感染、脳血管障害などの原因検索を進めます。
5分以上続く痙攣(けいれん重積状態)には、段階的な薬物治療が行われます。

6-2. 原因疾患への治療

  • てんかん:抗てんかん薬による発作コントロール。
    約70%の患者は適切な薬物療法で発作が抑制されます。
    薬剤抵抗性の場合は外科的治療、迷走神経刺激療法、
    ケトン食療法なども選択肢になります。
  • 感染症:抗菌薬・抗ウイルス薬による原因治療。
  • 代謝異常:低血糖の補正、電解質の補正など。
  • 熱性けいれん:多くは自然に止まるため、特別な治療は不要なことが多いです。
    5分以上続く場合はベンゾジアゼピン系薬剤が用いられます。

具体的な薬剤の選択・投与量は、患者さんの年齢、原因疾患、合併症の有無によって異なります。
必ず医師の判断のもとで行ってください。


 【 東洋医学的な解説 】


7. 東洋医学からみた痙攣

7-1. 東洋医学での呼び名と概念

東洋医学では、痙攣は主に以下のような名称で整理されてきました。

名称

読み

対応する状態

搐惕

ちくてき

比較的軽い筋肉のピクつき・震え(搐=ひきつる、惕=おののく)

抽搐

ちゅうちく

強い引きつり・ガクガクした発作的な筋収縮

痙証

けいしょう

筋肉のこわばり・硬直を主とする病態

瘛瘲

けいしょう

手足の屈伸を繰り返す引きつり(小児の急驚風などで用いられる)

癇証

かんしょう

てんかんに相当する概念(反復する意識障害と痙攣)


これらはいずれも「風」の病理と深く結びついています。
東洋医学の古典には
「諸風掉眩、皆属于肝(風による動揺・めまい等はすべて肝に属する)」
という有名な一節があり、痙攣を含む「風」の症状は
五臓では
と深い関わりがあるとされています。

7-2. 病理の核心:内風(肝風内動)

外から入ってくる風邪(ふうじゃ)とは異なり、
身体の内部から発生する「風」を内風(ないふう)と呼びます。
痙攣に関連する内風は「肝風内動」として整理され、
なぜ風が生じるのかによって、大きく実証と虚証に分けて考えます。

  • 実証タイプ(余剰・過剰が原因)
    熱や痰などの過剰な病理産物が体内にあふれ、それが風を動かす。
  • 虚証タイプ(不足が原因)
    血や陰液の不足により筋肉や神経を養えず、制御を失って風が動く。
    この実虚の見極めが、治療方針を決める上で最も重要なポイントになります。

8. 証の分類と対処法

8-1. 実証系の証

熱極生風(ねつきょくせいふう)

  • 病態:高熱や強い炎症により体内の熱が極まり、熱が風を生む。
    小児の急驚風(高熱に伴う急激な引きつり)に代表される病態。
  • 特徴的な症状:高熱、四肢の強い引きつり(抽搐)、意識混濁、顔面紅潮、口渇、舌は紅で黄苔。
  • 鍼灸の方向性:清熱熄風(熱をさまし、風を鎮める)、平肝熄風の経穴を用いる。
    高熱時は十二井穴の刺絡も古典的な手法。

痰熱動風(たんねつどうふう)

  • 病態:体内に蓄積した痰と熱が結びつき、意識を擾乱(じょうらん)して痙攣を引き起こす。
    痰の詰まりが加わるため、意識障害を伴いやすい。
  • 特徴的な症状:痙攣に加え、意識がぼんやりする、喉にゼロゼロと痰が絡む、胸が苦しい、嘔気、舌苔は黄膩(べったり黄色い)。
  • 鍼灸の方向性:化痰清熱・開竅熄風。化痰や熄風の効果のある経穴を使用する。

肝陽化風(かんようかふう)

  • 病態:ストレス・怒り・睡眠不足などで肝の陽気が過剰に亢進し、制御できなくなって風を生む。
    高血圧やめまいを背景にした痙攣に近い病態。
  • 特徴的な症状:めまい、頭痛(脹るような痛み)、イライラ、手足のふるえ、顔面の紅潮、耳鳴り。
    重症化すると突然の意識障害や半身不随を伴うことがある(中風に至る)。舌は紅で少苔。
  • 鍼灸の方向性:平肝潜陽・熄風の効果のある経穴を使用。
    腎陰を補い、肝陽の暴走を下から抑える必要性がある。

8-2. 虚証系の証

血虚生風(けっきょせいふう)

  • 病態:血(とくに肝血)の不足により、筋肉・腱が十分に養われず、内風が生じる。慢性
    疾患、産後、過労、栄養不足などが背景にある。
  • 特徴的な症状:軽いピクつき・こむら返り(搐惕に相当)、手足のしびれ、めまい、動悸、顔色が蒼白、爪が割れやすい、舌は淡白で薄苔。
  • 鍼灸の方向性:養血柔肝・熄風。養血、柔肝熄風の経穴を使用。灸の併用で温養を図ることもある。

陰虚風動(いんきょふうどう)

  • 病態:肝腎の陰液が長期的に消耗され、陽を制御できなくなり風が動く。
    慢性の熱病の後期、加齢、過度な消耗が背景。
  • 特徴的な症状:手足のふるえ・ピクつき、口や喉の乾燥、手のひら・足裏のほてり、盗汗(寝汗)、腰やひざのだるさ、舌は紅で少苔または無苔。
  • 鍼灸の方向性:滋陰柔肝・潜陽熄風。滋陰、熄風の経穴を主に使用する。鎮めるだけでなく「養う」ことも重視する。

8-3. その他の関連する証

寒凝筋脈(かんぎょうきんみゃく)

  • 病態:冷えにより筋肉の経脈が収縮・拘急し、痛みを伴う筋痙攣(クランプ)を生じる。
  • 特徴的な症状:冷えた部位のこむら返り、筋肉の拘急、温めると楽になる、舌は淡で白苔。
  • 鍼灸の方向性:温経散寒・舒筋。温灸や箱灸で患部を温めると攻を得やすい。

気血両虚のこむら返り

  • 病態:気血の不足により筋肉への栄養供給が追いつかず、夜間や疲労時にこむら返りが頻発する。
  • 特徴的な症状:繰り返すこむら返り(とくに夜間)、疲れやすい、食欲低下、舌は淡白。
  • 鍼灸の方向性:補気養血・舒筋。

実際の弁証・施術は、お一人おひとりの症状・体質・経過・随伴症状を踏まえて総合的に判断いたします。

9. 鍼灸における痙攣へのアプローチ

9-1. 大原則:熄風止痙+根本治療

東洋医学における痙攣への基本的なアプローチは、
まず「風を鎮めて痙攣を止める(熄風止痙)」こと(=標治)を急務とし、
その上で風が生じた根本原因(熱・痰・血虚・陰虚など)に対する治療(=根治)を
組み合わせるという構成です。

つまり「けいれん=風」と短絡するのではなく、

  • 熱が極まって風が動いたのか?(実)、
  • 不足して制御できず風が動いたのか?(虚)、
  • 痰などの病理物質が絡むのか?
    …などを丁寧に見分けていく発想になります。

9-2. 鍼灸院でできること・できないこと

鍼灸院で相談できるケース

  • こむら返りが繰り返す(冷え・血虚・気血不足が背景にあるタイプ)
  • まぶたや顔面のピクつき(ストレス・疲労・肝陽亢進が背景)
  • てんかんの補完療法として、発作頻度や体調管理の一助として
  • 熱性けいれん後の体質調整(小児鍼も含む)

まず医療機関を受診すべきケース

  • 初めての全身痙攣、5分以上続く痙攣
  • 意識障害を伴う発作
  • 頭痛・麻痺・発熱を伴う痙攣
  • 原因が不明な痙攣のすべて(まず医療機関での診断が最優先です)


    鍼灸は医療機関での診断・治療に代わるものではありません。
    痙攣の原因診断を医療機関で受けたうえで、
    体質調整や再発予防の観点から補完的にご利用いただくことをおすすめします。




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鍼灸 縁庵

住所:大阪府茨木市永代町6-19 近藤ビル402

電話番号:090-3890-4915

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