五臓六腑〜脾の臓②〜

query_builder 2023/07/12
茨木_鍼灸東洋医学
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【五臓六腑〜脾の臓〜】の続きです。

前回はこちら→五臓六腑〜脾の臓〜


東洋医学では脾というものは、

かなり重要視されている臓器だということを綴りました。


今回はなぜ、どのように重要視されているのか?


という話を概念的な面から話していこうと思います。


…すこし難しくなるかもしれませんがお付き合いください。笑



【易学でみる脾の概念】

易学(えきがく)というものをご存知でしょうか?

古代中国では占いの方法として易が使用されておりました。

この易は非常に上手くできており、

生活の知恵が集約されているとともに、

処世の哲学が組み込まれています。

後に形而上(けいじじょう)学を形成し、

森羅万象を説明できるようになり、

医易学としても発展していきました。


この易では筮竹(ぜいちく)という棒を用いて

占いをしていくのですが…

溝のない面が(陽)を、

溝のある面が(陰)を表し、これで卦を組み立てていきます。


そうして表されるものが八卦(はっけ)という8つの基本図像です。

()、()、()、()

()、()、()、()






この八卦を方位などに当てて運勢や方位の吉凶を占っていました。


さらにこれを五行(五臓)の性質に当てはめると…

金(肺):乾、兌(天、沢)

火(心):離(火)

木(肝):震、巽(雷、風)

水(腎):坎(水)

土(脾):艮、坤(山、地)

となります。


ここで坤(こん)は地であり、臓腑では『脾』を表し、

卦をみてみるとということで

陰の極みであることがわかるかと思います。


そしてこの五臓においては脾のみ、方角が配当されていないですよね。


陰の極みである土(地)はつまり中央なのです。


さらに細かい話をしだすと…

本当に訳がわからなくなるので…笑


とりあえず

「脾は陰の極みで土であり、中央なのね!」

と思っておいてください。



この概念を頭に入れておきながら…

黄帝内経・素問『太陰陽明論』を読み解くと、


「脾者土也.治中央.常以四時長四蔵.」

→脾の臓は土であり、中央に位置する。

 常に4つの季節(春夏秋冬)と

 4つの臓(肝心肺腎)を調和(成長)させる。



ん〜!なるほど!ですね。


中央というのは方位や、臓腑としての位置を示す中央ってだけでなく…

物事の中心でもある、ということがわかりますね。



後に腎の項目で細かく綴りますが、

先天的には腎が関与し生命をもうけ、

後天的には脾によって身体は栄養されて成長していきます。


飲食ができなくなると、

エネルギーが生成されなくなり絶命しますよね。


そういった意味からも、

東洋医学では脾の臓や表裏関係にある胃の腑を重宝するのです。


これら物質代謝から生まれる、生存に必要な気を『胃の気』といい、

私が行う脈診も、ただ単に脈拍を確認しているのではなく、

脈管を通して中に流れる胃の気(=生命力)をうかがっているのです。



【脾は湿を悪む】

前述したように脾は陰の極み…

つまり太陰(たいいん)であり、土であります。

これを太陰湿土といい、湿気を含んだ土だと思ってください。


これ以上に陰(水)が加わると、湿気が溢れてしまうので

脾は湿を悪み(にくみ)、燥を好む。と言われています。


甘いものや油膩物の過食は

身体内に湿気(+熱もですが)を生じさせ、脾を傷めます。


東洋医学を少しかじっている人からすると


脾の五味は『甘』なのでは?と、思うかもしれませんが

昔の中国の医学ですので現代のように砂糖がバンバン入ったような

甘味というものは存在しませんので。笑


本来の甘というものは穀物の自然な甘味です。

麺類も元々は小麦ですが…練っているので凝縮され、

密度が増しており、お米よりも湿を生じさせやすくなっていますね。


適度な甘味は脾の働きを健やかにしますが、

過剰になると先ほど言ったように

結果的に体内に湿を溢れさせることになり脾を傷めます。


脾を傷めると湿の代謝が悪くなり、余計に蓄積されて…

という悪循環に陥ってしまいます。


そして湿が慢性的に停滞すると、

いずれ熱化して湿熱邪という病理産物が形成されます。


この湿熱邪が関与して

ちょっとジュクジュクした肌汁を伴う湿疹(アトピー性皮膚炎も含む)や肌荒れ、

痒み、蕁麻疹、鼻炎などを含むアレルギー反応が助長されたり、

慢性化されたりします。
※アレルギーに反応する場(免疫系)はまた別の臓腑の関与と考えています。


この理論で言うと

現代に小麦アレルギーが増えてきたのも

なんだか納得がいくような気がしますね。

日本人の”米文化”の体質に対して過剰に摂りすぎなのかと…。

(ましてや日本は湿気の多い環境ですので)


今は梅雨の時季でありますが…

この時季に体調が優れない、

と言う方は慢性的に体内に湿邪の停滞が絡んでいる可能性もある、

とみることができます(或いは脾の病症)。


やはり適度に運動して汗をかき、

余分な湿の排出をすることは養生の一つと言えますね。

(ただ、湿気が多いすぎると蒸し暑くなり、一段と熱中症のリスクも

 高まるのでそこは加減してきただきたく思います)



【うつ病と脾の関係性】

さて、ここまでさんざん脾はいんの極み…

という話をしてきました。それに加えて湿気。


少し言葉遊びのようにも聞こえますが…

『陰湿』という言葉がありますよね。


まさに、脾の臓が病んで前回の記事に書いた

「意・智」の力が弱ってくると

どんどんと思考が陰の方へ傾いていってしまい、

落ち込むこと(鬱的)しかなくなり

やがて五臓を主宰する心の臓にまで至ると

心脾両虚となるのがうつ病の発症原因の1つでもあります。


この場合はやはり、脾の弱りがメインなので…

これはストレスからくるうつ病だ!

と判断して作用のキツイ薬や、

気を発散させるような治療をバンバンおこなっていると

益々悪化していく可能性があります

気をつけなければなりません。


これまた前回の記事でも「脾は四肢を主る」と説明しましたが

手足を動かすことは脾を養い、健やかにし、

且つ気の停滞の発散にもなるので

やはり、散歩をはじめとした有酸素運動はとてもおすすめなのです。


なかなか一歩目を踏み出すことを躊躇うかもしれませんが…

いざ、やってみると気持ちのいいものなので

1週間のうちでまずは3回!それだけでいいので30~40分歩く!


習慣化してしまえば、なければ逆に気持ち悪くなってしまうので

初めのうちだけでも頑張っていただきたいですね。


走れ!ハードなトレーニングを行え!

と言っているのではありません。

ただ歩くだけで、気持ちよくて健康にも良くて、

病の予防にもなります。


むしろ…身を削ってガンガン走っている私より健康的かと…笑



こんな難しい話を最後まで読んでくださった根気があるのであれば

大丈夫です。是非、実践してみてくださいm(_ _)m


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鍼灸 縁庵

住所:大阪府茨木市永代町6-19 近藤ビル402

電話番号:090-3890-4915

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