五臓六腑〜脾の臓〜

query_builder 2023/06/20
茨木_鍼灸東洋医学
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五臓六腑の概念。

東洋医学の蔵象学と、

西洋医学の内臓学の考え方の違いについて…

現在は連続して投稿しております。

五臓六腑について〜西洋医学の内臓学との違い〜


各論にはいり…

これまで肝、心について綴りました。


肝→五臓六腑〜肝の臓〜

心→五臓六腑〜心の臓〜


今回は脾の臓について綴っていきたいと思います。


さてさて、面白いことに

この脾の臓は特に西洋医学とは考え方が

他の臓腑に比べて違いが大きいように思います。


しかしあまり・・・

脾臓(Spleen)の話って普段聞かないですよね。


ということで、現代医学的な脾臓考え方を先に示しておきます。

以下、

・免疫反応の場として働く。

・骨髓で造血され始める胎生期には脾臓で赤血球が作成される。

・古くなった血球の破壊を行う。

・血液を蓄える機能がある。


主にこんな感じです。


これを踏まえた上で…いきましょう。


【脾の臓とは?脾臓との違い】

まず、大雑把に説明しますと

東洋医学での脾の臓は消化器全般と関連している、と考えます。


もうこの時点で、西洋医学の脾臓とは大きく異なりますよね。


以前の投稿でも説明しましたが、

五臓にはそれぞれ対応する六の腑があります。


脾に対応するのは胃の腑です。


こうなってくると消化器に関与してくることが想像しやすくなってきますね。


胃に食物が入ると消化が始まります。

ここは西洋医学とほぼ同義ですね。

詳しくは胃の腑の話のときにしますが…。


そこから栄養(水穀の精微)をこし出して

気血に変化させ、全身に輸送する働きをするのが脾の臓です。


この働きを『黄帝内経 素問』※以下『素問』

霊蘭秘典論にて

「脾胃者.倉廩之官.五味出焉.」と記載があります。

五味というのは、気血化生の源です。

(化生は何かが別のもの変化すること、生まれ変わることを指す。

つまりここでは飲食物が気血へ変化することを示しています)


身体エネルギーを輩出する大本なので

倉廩(倉庫)の官と名付けられるわけです。


そして脾は「四肢を主る」といわれ、

手足との関連が深いと考えられています。

つまり、手足をよく動かすことは、

脾胃の働きが良くなることを示しています。

逆に飲食が乱れてしまうと手足に影響が出ることもあるのですよ。

ex)手足の荒れ、痺れ、発汗過多など…


日本の、昔の鍼灸の先生である岡本一抱(1655頃—1716頃)氏

『臓腑経絡詳解』の中でこの脾と胃の関係を”石臼”に例えています。


胃の上に脾ご乗っかかっていると考え、

石臼の上側を脾、下側を胃とし、取っ手を手足と考えます。


穴に入れる豆は水穀(食物)であり、

取っ手(手足)を動かすと脾の臓が動いて、

胃の腑を揉むことで消化吸収を促している…


なるほど。上手い例えだと思います。



【脾の臓が影響する病証】


胃は飲食物を受納し、

消化して水分や栄養(水穀の精微)をこし出して

残った濁を小腸へと輸送します。

つまり、気のベクトルは下方向です。

それに対して脾は、こし出された水分や水穀の精微を受けて、

上方へ持ち上げた後に他の臓の力を借りて全身へと散布します。

脾と胃では「脾主升」「胃主降」と、相反する働きをしています。

きれいに陰陽の対立し、調和しているといえますね。


しかし脾が弱り、この上昇させる作用が低下すると…

立ちくらみ目眩頭がぼーっとする、などの症状が出現します。

貧血様の症状が起こるわけですね。


津液(しんえき)の記事でも紹介しましたが…

最近若年層に多い『起立性調節障害』も

脾の問題が絡んでくることが多いように思います。

津液(しんえき)〜東洋医学で視る体液の役目〜


更に、脾気が低下してくると

中気下陷(ちゅうきげかん)という状態を引き起こし

”持ち上げて維持する力”も低下してきて…

内臓下垂子宮脱脱肛上眼瞼下垂などの

症状を引き起こすこともあります。


これらの疾病が、消化器と関連しているなんて

西洋医学ではなかなか結びつかないのではないでしょうか。



そのほか、

『素問』刺法論にて

「脾爲.諫議之官.知周出焉.」とあります。

「諫議(かんぎ)」とは物事を治める、

色々と思惑するという意味があります。

『諫』いさめる、諫議大夫。

古代中国の官職の一つで、君子の誤りをいさめ、

国家の利害損失を忠告する役目でした。


他、『素問』宣明五気篇で「脾蔵意」とあり、

五神の中の「意・智」のことを言っています。


総じて考える力、思考能力ですね。


暴飲暴食して脾胃を傷めると、頭がボーッとしたり、

急激に眠たくなって頭の回転が悪くなったりしますよね。

また、脾の五味は『甘』ですので甘いものの過食もそうです。


幼児で寒瘧を起こしやすい短気な子供や、

自閉症スペクトラムなどは、

この観点で考えると飲食に問題があるのではないか?

と考えられるわけです。


そして最近の若年層はキレやすい、とよくいわれるのも


暴飲暴食、動物性食品、甘いものの偏食が関与しているのではないか?


ということが考えられるわけですね。


また、脾へ血とも深く関連します。


肝は蔵血、心は血脉…に対して脾は統血作用。

消化吸収に働いて気血を生成するだけでなく、

血を統摂して脈中に収め、漏れ出ないようにしています。


これは高齢者に多いのですが…

ちょっと当たっただけで内出血

orぶつけた記憶がないのに内出血している…

こういったものは脾胃の弱りを疑うことになります。


この点からいうと…易出血性である血友病なんかも

脾と関連してくることが考えられるわけですね。



まだまだ…脾に関連する、病気や症状はたくさんあり…

書きたいことも他にもあるのですが

長くなってしまうので次回に分割しようかな、と。笑


現時点で、東洋医学でいう脾の臓はいかに重要視されているか…

おわかりくださったかと思います。


あれこれたくさんあって、ちと複雑ですけれども…

脾をフル回転させて…思慮してください。笑


ではでは~( ・・)/~~~

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鍼灸 縁庵

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