『春眠不覺曉(春眠暁を覚えず)』とは?

query_builder 2025/03/16
茨木_鍼灸東洋医学自律神経
春眠不覺曉 イラスト

ある質問がありました。


「春はどうして眠たくなるのですか?

『春眠暁を覚えず』って言いますが…

ホルモンバランスですか?」


それに対して教養のない私は…

(学生時代は体育会系で全く勉強してこなかったので…)

恥ずかしくも、その言葉をそもそも知りませんでした。笑


と言うことで調べてみました。

これは中国の昔の詩人さんが詠ったものみたいですね。

確かに…

なかなか的を射ている詩だと思います。


その中で、なぜそのようになるのか?

これを詠った人物は、他に意図があったのだろうか?


と、色々興味深く、考え始めると面白かったので

今回の題材にしました。


【春眠不覚暁の意味】

「春眠不覺曉(しゅんみんあかつきをおぼえず)」は、

7〜8世紀の中国 唐王朝時代の詩人である

孟​​浩然(もうこうねん)『春暁(しゅんぎょう)』

という詩の一句です。


全文は以下のとおり


春眠不覺曉、處處聞啼鳥。

夜來風雨聲、花落知多少。


書き下し:

春眠(しゅんみん)暁(あかつき)を覚えず

処処(しょしょ)啼鳥(ていちょう)を聞く

夜来(やらい)風雨の聲(こえ)

花落つること知んぬ多少ぞ


意味:

春の暁は気候も暖かく、
心地よい眠りに夜が明けたのも知らず
寝すごしてしまったが、ふと眼をさませば
あちこちで小鳥の啼く声がきこえる。
そういえば、昨夜は風雨の音がはげしかった。
あの嵐で庭の花はさぞたくさん散ったことだろう。
ー公益社団法人 関西吟詩文化協会より

私も最近、朝に弱くなっているな…

と感じていたのでめちゃくちゃ共感しました。笑


しかし、中国の漢詩なのであれば

ただその現象を詠っただけではなく、

東洋医学的な見解もあるのではないか?


と思い、少し考察してみました。


なぜ、春はついついうたた寝したり、

朝が起きづらくなってしまうのか??


論文などが出ているわけではありませんが…

理論を整理すると理屈も少し考えられたので

紹介したいと思います。


私と同じく、春に近づくにつれて

朝起きづらく感じている人は是非、読んでください。


【春はなぜ眠たくなるのか?】

現代医学的な見解では

以下のような説があるようです。


  1. 自律神経の変化
    冬から春への移行期に気温が上昇することで
    交感神経と副交感神経のバランスが崩れやすくなる。
    副交感神経が優位になるとリラックスしやすくなるため、
    眠気を感じやすくなります。
  2. 日照時間の変化
    春になると日照時間が長くなり、
    体内のメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌リズムが変化。
    体がこの新しいリズムに適応するまで、
    一時的に眠くなってしまうことがあります。
  3. 血圧と血流の変化
    気温が上昇し、血管が拡張することで
    (血管抵抗が少なくなるため)血圧が低下する傾向に。
    低血圧の人は、特に朝の目覚めが悪くなる傾向があります。
  4. 冬の疲労の影響
    冬の間に蓄積した疲労が、春になって身体が緩むことで、
    眠気を伴うこともあります。


なるほど…

と思いましたが、

じゃあどう対処したらいいの?

とも私は思いました。

(それぞれの生理作用を調整するお薬はあるでしょうが…

これくらいの症状ではあまり服薬したくない…と、
私は思うのですが、皆さまはいかがでしょうか?)


ここで東洋医学的に考えてみたところ、

上記、現代医学的な見解と通ずるところがいくつかありました。


【『春眠不覺曉』東洋医学の見解】

主に関与する臓は『脾』だと考えます。

そして『肝』


ではぞれぞれの解説をしていきます。


『脾』

消化器全般(摂食〜消化〜吸収〜排泄まで)に関わりがあります。

飲食物から水穀の精微(すいこくのせいび)を取り出し、

「気」を生成する働きに関与します。

気血を生成する中で必要なものは清陽

不必要なものは濁陰として分別し、

濁なるものは尿や大便として排泄されるルートを辿ります。

清なるものは上方へ持ち上げられ昇清作用)、
肺で呼吸によって入ってきた天空の清気と交わって
「気」というものが生成されます。


その他、

内臓を持ち上げて正しい位置に保ち続ける

昇提(しょうてい)作用もあります。

昇提が弱れば内臓下垂につながります


脾が弱る(脾虚)とこれらの機能低下を起こします。


昇清作用が弱ると、

上部に清陽が到達しないために

頭がボーッとする、働かない、

そして眠気が強い、ウトウトする…

といった現象が起きてきます。


食後に眠気が強かったり、

頭がぼんやりして働かない…

と言う経験はありませんか?


脾が弱っているとあのような現象が起きやすくなります。


朝起きて、頭が冴えるまでなかなか時間がかかる人も

清陽を持ち上げる力が弱いからと言えるでしょう。


だから食事は食べすぎないようにし、

甘いものの過剰摂取には気をつけ、

就寝前に食事を控える…など

脾(消化器)にかかる負担を少なくすること

1つ、解決法になります。


脾が関与した睡眠の問題は

このようなメカニズムですね。


因みに…

昇提作用が弱れば内臓下垂につながります。

胃下垂、脱肛、脱腸、子宮脱などなど…。



そしてもう一つ、『肝』の臓。


何度も書いていますが…

春は肝の臓と関与が深い季節です。


冬が寒い間は寒邪の影響を受け、気は鬱滞しやすいです。

(寒邪の特徴である凝滞作用による)


そして春に近づくにつれて暖かくなることで

肝気は伸びやかになります。

緊張していた肝気が一気に緩むことにより

眠気が出てしまう…

ということが考えられます。


これが現代医学で説明した1、4に

近いかと思います。


もうお分かりかと思いますが

東洋医学でいう”肝気”は

現代医学の自律神経系と近い働きをしますね。


その他、

春の肝気の暴発により、

脾気が逼迫(木剋土)されることで

相対的に脾虚が起こる故に

上記、脾虚症状が出る場合もあります。



これは前回も綴った肝脾不和ですね。


ですから、もしこの症状を治療するのであれば

問診情報や体表観察で状態を見極めて

脾を補うべきなのか、

肝を瀉すべきなのか…

という判断が必要になります。


そして先述した脾に負担をかけない食事をしながらも、

肝気を伸びやかにする食事も同時に意識すると良いでしょう。


肝気を伸びやかにする食事についてはこちらを参照

花粉症の東洋医学的見解 鍼灸・漢方が効く


☝︎の記事にも書いていますが…

春の養生について再び触れて今回は終わります。

この養生も本当に的を射ていると思いますので

食養生と合わせて実践してみてください。


何かハッとすることがあれば幸いです。


春三月.此謂發陳.天地倶生.萬物以榮.夜臥早起.廣歩於庭.

被髮緩形.以使志生.生而勿殺.予而勿奪. 賞而勿罰.

此春氣之應.養生之道也. 逆之則傷肝. 夏爲寒變.奉長者少.


太文字部 訳:

日照時間が長くなりますので、

冬に比べて就寝時刻は遅めでも構いませんが

朝は早く起きて、庭をゆったり歩きましょう。

(=昔の中国の宮殿は庭がとてつもなく広いですから、

 ここではゆったりと散歩する、の解釈でOK)

髪は緩めに縛り、服もゆったりとしたものを羽織り、

生きるものを愛で、奪うでなく与えるような気持ちで、

罰するでなく称賛するような心持ちで生きましょう。


   

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鍼灸 縁庵

住所:大阪府茨木市永代町6-19 近藤ビル402

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