「耳鳴り」の原因と対処法|西洋医学と東洋医学の視点から解説

query_builder 2025/04/20
茨木_鍼灸東洋医学自律神経体質改善
耳鳴り 画像

「キーン」「ジー」「ブーン」……

誰にも聞こえない音がなぜか

耳の奥で鳴り続ける…。

それが“耳鳴り”です。


一時的なものであれば

特に気にせず済むかもしれませんが、

「ずっと鳴っていて集中できない」

「寝るときに気になって眠れない」など、

日常生活に支障をきたすほど

つらいケースも少なくありません。


この記事では、

耳鳴りの仕組みや原因、

西洋医学・東洋医学

それぞれの視点からの対処法まで、

詳しく解説します。

自分に合ったケアのヒントを

見つけていただければ幸いです。



耳鳴りとは? その種類と仕組み

耳鳴り(みみなり、医学用語では「耳鳴〈じめい〉」)とは、

周囲に実際の音がないのに

「何か音が聞こえる」と感じる現象です。


聞こえる音の種類は人によって様々で、

高い「キーン」という金属音、

低い「ブーン」という唸り音、

「ジー」「ザー」といった虫の羽音や

機械音のような音など…

多種多様に表現されます。


音の大きさや頻度も個人差が大きく、

一時的にしか起こらない軽微なものから、

常に鳴り続けて睡眠や仕事に支障をきたすほど

強いものまで幅があります。


医学的には耳鳴りそれ自体は症状であり、

何らかの原因で生じる「結果」であって

病名ではありません。


大きく分けて、

自分にしか聞こえない「自覚的耳鳴り」と、

体内で実際に音が発生しており

他人にも確認できる可能性がある

「他覚的耳鳴り」の2種類があります。


一般的に「耳鳴り」と言えば

前者の自覚的耳鳴りを指し、

患者本人だけに聞こえる幻音です。


他覚的耳鳴り(ごく稀です)は

血流の脈打つ音や筋肉の痙攣による

振動音が原因で起こり、

医師が聴診器で確認できるケースもあります。


自覚的耳鳴りは非常に頻繁にみられる症状で、

特に加齢とともに訴える人が増える傾向があります。


報告によれば先進国では

人口の10~15%程度の人が

何らかの耳鳴りを感じた経験があり、

日本国内でも約1200万人が

日常的な耳鳴りに悩んでいると推計されています。

参考文献→nagatomo-ent.jp


若年者でも大音響にさらされた直後などに

一時的な耳鳴りを経験することがありますが、

通常は一過性で治まります。

しかし

「常に耳鳴りが消えない」

「生活に支障が出るほどつらい」という場合には

医学的なケアが必要になります。


耳鳴りの発症メカニズム:

人間の耳は空気の振動を電気信号に変換し、

脳がそれを「音」として認識しています。

このとき内耳の蝸牛という器官にある有毛細胞が

周波数ごとに振動を感知する重要な役割を担います。

しかし加齢や大きな騒音曝露などで

特定の周波数帯の有毛細胞が損傷・脱落すると、

その帯域の音信号が脳に届かなくなります。


しかし、脳は欠落した信号を補おうとして

聴覚神経の活動を過剰に高めるため、

本来ないはずの音まで

「聞こえてしまう」ようになります。


実際、ある報告では

耳鳴りを訴える患者の90%以上に

何らかの難聴(聴力低下)が確認されており、

聴力の低下が耳鳴り発生の

大きな誘因であると考えられています。


「脳が静寂を埋め合わせるために音を作り出している」

とも表現され、

いわば耳鳴りは聞こえなくなった音を

補完しようとする脳の過剰適応反応と言えるのです。


この記事では主にこのようなメカニズムで起こる

自覚的耳鳴りについて解説します。


西洋医学における耳鳴り

耳鳴りは様々な原因で起こり得ますが、

最も多い原因は内耳の有毛細胞が

障害されて生じる難聴です。


特に高音域の聴力低下に対応した

周波数の耳鳴りが生じるケースが多く、

高齢者の慢性的な耳鳴りの多くは

加齢性難聴によるものです。


そのほか主な原因として以下のようなものが挙げられます。


【耳や聴神経の疾患・障害】

  • 老人性難聴(加齢性)
  • 騒音性難聴(大音量への曝露
  • 突発性難聴(急激な内耳障害)
  • メニエール病(内耳リンパ異常)
  • 慢性中耳炎、内耳炎、耳硬化症 など
  • 聴神経腫瘍(MRI検査で確認)

これら耳そのものの病気が原因の場合、

しばしば難聴やめまいなど他の症状も伴います。


めまいに関しては

以前にブログを書いていますのでご参考ください。

めまい(目眩): 西洋医学と東洋医学の視点から



【耳以外の要因】

  • 耳垢栓塞(耳あか詰まり)
  • 耳管狭窄症(耳と喉をつなぐ管の機能異常)
  • 頭部外傷や頸部捻挫(むち打ちなど)
  • 薬剤性(アスピリン、抗がん剤、利尿剤、抗うつ薬など)

薬剤性の場合は通常、原因薬の中止で症状が消失します。


【全身的・生活習慣的な要因】

  • ストレス
  • 睡眠不足
  • 疲労貧血
  • 甲状腺機能異常
  • 糖尿病顎関節症
  • 筋緊張による影響
  • 不安障害、うつ病 など



耳鳴りの診断と検査(西洋医学)

耳鼻科ではまず耳鳴りが

自覚的か他覚的かを問診で判断し、

必要に応じて以下のような検査を行います。

  • 聴力検査(オージオメトリー)
  • 耳鳴検査(ピッチマッチ・ラウドネスバランス)
  • MRI/MRAなどの画像検査(腫瘍・血管病変の確認)


多くの場合、こうした検査で

命に関わる深刻な疾患は見つかりません。

むしろ検査によって

「重大な病気が隠れていなかった」 と

分かるだけでも大きな安心材料となります。


このように西洋医学の診断では

原因疾患の有無を調べるとともに、

患者の不安を和らげる十分な説明を行うことも重要です。



 耳鳴りの治療法(西洋医学)

▶根本治療と対処療法:

残念ながら、現代の医学でも

自覚的耳鳴りを完全に消すような決定的治療法は

現時点では確立していません。

特に原因が複合的なケースでは治療効果に個人差も大きく、

「耳鳴りそのものを消し去る」よりは

「耳鳴りとうまく付き合って苦痛を軽減する」

ことを目標にする対処的アプローチが中心です。

とはいえ、原因によって取れる対策や

症状の緩和法はいくつもあります。


まず、中耳炎や耳垢詰まりなど

治療可能な原因が見つかればその治療を優先します。

それでも耳鳴りが残る場合や原因が特定できない場合に、

以下のような方法で症状緩和を図ります。

  • 補聴器による治療:
    難聴を伴う耳鳴り患者では補聴器の装用が
    第一選択となることが多いです。
    聴力低下で不足した音刺激を補えば
    脳の過剰な神経興奮が収まり耳鳴りも和らぐ、
    という考えに基づく治療で、
    適切にフィッティングした補聴器を使用すると
    約半数の患者で耳鳴り症状が軽減するとの報告があります。


  • 音響療法:
    音響療法とは、環境音やホワイトノイズ(雑音)など
    外部から音を持続的に聞かせることで
    耳鳴りの響きを和らげたり、脳を慣れさせていく
    治療法の総称です。
    代表的なものに以下のようなものがあります。
    ・TRT(耳鳴り再訓練療法)
    小さめの音量でノイズを常時流し、
    「耳鳴り音は恐れる必要のないものだ」と
    脳に学習させていくリハビリ療法です。
    ・マスキング療法
    耳鳴り音が聞こえなくなる程度に
    やや強めのホワイトノイズ等を流して
    耳鳴りを文字通り覆い隠す(マスキングする)方法。
    一時的にでも耳鳴りから解放されることで
    ストレスを減らし睡眠時などに用いられます。


  • 薬物療法:耳鳴りそのものを消す特効薬は
    現在、残念ながら存在しません。
    耳鼻科で処方される内服薬としては、
    ・ビタミン剤や循環改善薬
    →内耳の血流改善を目的とする
    ・精神安定剤(抗不安薬)や抗うつ薬
    →神経の興奮を抑える

    そのほか、不眠対策として睡眠導入剤や
    抑肝散などの漢方薬、
    亜鉛やメチコバール(ビタミンB12)など
    サプリメントまで様々あります。

    しかしいずれも対症療法的に
    「気分を落ち着かせる」
    「睡眠の質を向上させる」ことを目的とした
    補助的な薬であり、耳鳴りそのものを
    治すものではありませんが…
    薬によって脳が耳鳴りを意識しにくくする状態を
    作り出すことで、 耳鳴り治療のゴールである
    「音はあっても気にせず生活できること」
    に近づくための補助的手段と言えます。

    ▶ 生活上のセルフケア:
    耳鳴りの治療と並行して
    日常生活でできる工夫も有益です。
    静かな環境では耳鳴りが目立ちやすいため、
    寝室でタイマー付きの音楽を流す、
    日中も適度にBGMをかけるなど
    静寂を避ける工夫が役立ちます。
    またこれ以上聴力を悪化させないよう
    大きな音から耳を守ることも大切です。
    (例:工事現場やコンサートでは耳栓を使用)が 

    1.さらにストレスを溜めない
    2.生活リズムを整える
    3.刺激物を控えること

    これらも耳鳴り悪化防止には重要とされています。
    十分な休息や睡眠、入浴やストレッチ等で
    自律神経を整え、過度のカフェインや
    アルコール・ニコチン摂取を避けることも大切です。
    この辺りは以前にも紹介しためまい(眩暈)と同様ですね。

    自律神経との関係や
    肝・腎・脾の関連が似ているため、
    めまいと共通の見立ても可能です。


東洋医学における耳鳴り

▶耳鳴りの原因と病態(東洋医学)
東洋医学(漢方・中医学)の視点では、
耳鳴りは耳局所だけの問題ではなく
全身のバランス異常の一表現と捉えます。

伝統的に「耳は腎の開竅(体表に開いた穴)」とされ、
腎をはじめとした五臓六腑の状態と
密接に関係すると考えられてきました。

実際、漢方では耳鳴りの原因として
肝・腎・脾の失調が重要視されます。
これもめまい(眩暈)と同じですね。

例えばストレスや情緒の乱れ、
過労(疲労の蓄積)、加齢、食生活の乱れ、虚弱体質、
発熱性疾患や上気道炎(風邪)などが誘因となり、
肝・腎・脾の機能を失調させることで起こると考えられています。

西洋医学的に原因不明とされる慢性的な耳鳴りでも、
東洋医学ではこうした要因による
臓腑の機能のアンバランスが背景にあると考えます。

東洋医学で病の性質を弁別する際に
よく用いられる概念である
「実証(エネルギー過剰タイプ)」
「虚証(エネルギー不足タイプ)」

という分類。
もちろん、耳鳴りに関しても適応されます。
実証タイプの耳鳴りは体内に余分な「邪」がある状態で、 突然発症する激しい耳鳴りや
発作的に悪化するケースが該当します。
代表的なものを紹介していきます。


  • 肝火上炎(かんかじょうえん):
    これはストレスや怒りなどの影響で
    肝のエネルギー(気)が鬱結し、
    慢性化することで「肝火」となって
    頭部に火が昇り、耳を犯すタイプで、
    高く鋭い「キーン」というような耳鳴り音が特徴。
    ひどい場合は本当に炎のように「ゴウゴウ」と
    大きい音
    で鳴る場合もあるようです。
    情緒が激しく乱れると症状が増悪しやすく、
    頭痛(側頭部のズキズキする偏頭痛)やめまい、
    目の充血、イライラ、不眠(目が冴えて眠れない)、
    便秘などを伴うことが多いとされています。
    実際に
    「怒ると耳鳴りが強まり、片頭痛や眩暈を伴う」
    といった訴えはこの肝火タイプを疑います。


  • 痰濁上擾(たんだくじょうじょう):
    暴飲暴食などで体内の水分代謝異常が生じ、
    形成された「痰湿」が熱を帯びて耳に上攻することで
    低音でブーンというような
    こもった耳鳴り耳閉感を生じます。
    このタイプはめまいや吐き気、胸のつかえ感などを
    伴うこともあります。

    一方、虚証タイプの耳鳴りは
    エネルギー不足の慢性症状で、
    徐々に悪化する慢性的な耳鳴りや難聴が特徴です。


  • 腎虚(じんきょ):
    腎気および腎精の不足のことです。
    腎は生命エネルギーの源である
    「精」を蓄える臓であり、
    加齢や過労などで腎精が不足すると
    髄海である脳とつながる耳への栄養も不足し、
    絶え間ない小さな耳鳴り聴力の衰えが生じます。
    この加齢による難聴・耳鳴りは東洋医学的には
    腎精の枯渇(腎陰虚)に相当すると考えられます。


このほか血液の不足(血虚)
気の不足(気虚)による耳鳴り、
頭部の血行不良(瘀血:おけつ)による耳鳴りなど、
東洋医学では一口に「耳鳴り」と言っても
非常に多くの証(パターン)が存在します。


患者さん個々の体質・症状により
これらの証が単独で現れたり、
複数がからみ合って現れるため、
東洋医学ではまずどのタイプに属するかを
望・聞・問・切の四診を駆使して
見極める(弁証)ことが治療の第一歩になります。



東洋医学の治療と対処法

漢方や鍼灸など東洋医学的アプローチでは、
上記の証に応じて身体全体の調整を図る治療を行います。


耳鳴りそのものに対して直接「音を消す」ことに
焦点を置いた処置をするというより、
原因と考えられる内的アンバランスを是正することで
結果的に耳鳴りを軽減・消失させることを目指します。

例えば
「肝火」が強い実証タイプ(肝火上炎など):
清肝瀉火(肝の火を冷まし鎮める)という治法にもとづき、
精神的ストレスの緩和や肝の臓の機能を整える治法を用いて
耳鳴りと随伴症状(頭痛、めまい、イライラ等)の
改善を図ります。

「腎虚」タイプ:
衰えた腎の機能を高める補腎(補腎陰)効果があり、
聴覚を滋養するような治法を用いて
徐々に体力をつけていくことで症状を和らげます。

痰湿が絡む(痰濁上擾)タイプ:
健脾化痰(脾を強め痰を除く)作用を用いた治法で
体内の水分代謝を改善しつつ耳への邪を除きます。

このような処置と同時に
食事指導など生活面の改善(養生)も図ります。

鍼灸治療では体質素因を把握しつつ耳に関連する
臓腑の問題・邪気を払うツボ(経穴)を使用し、
また漢方ではそれに適した方剤を用いて
全身のバランスを調整する治療を各証に対応して行います。

※本記事では具体的な経穴名や
 鍼灸テクニックには敢えて触れません。

すなわち、東洋医学では「証」を見極めて
身体の陰陽バランスを整えることで
耳鳴りを含む諸症状を根本から改善することを目指します。

こうしたオーダーメイドのアプローチによって、
「ただ音を紛らわせる」のではなく
再発しにくい体質改善を図れる点が
東洋医学的治療の利点と言えるでしょう。
もっとも効果が現れるまでに時間を要する場合も多く、
即効性という点では
西洋医学の対症療法に軍配が上がることも事実です。

症状の強い急性期には補聴器や薬物療法でしのぎつつ、
鍼灸や漢方薬で体質改善を並行して行うといった
双方の医学の併用も実践されており、
それは理にかなっていると私も思います。

例えば急性期にはまず西洋医学での診断・除外を行い、
その後の生活改善や再発予防に
東洋医学的アプローチを併用することで、
心身両面からのケアが実現できます。

西洋医学・東洋医学それぞれの利点を活かしながら、
長期的な症状軽減とQOL改善を目指すことが望ましいでしょう。



まとめ|「音が気にならなくなる日」は来るかもしれません

耳鳴りは目に見えない症状であるがゆえに、
「気のせい」と片付けられてしまったり、
自分でも不安や苛立ちを抱えやすい不調です。

しかし、西洋医学では耳の構造や
脳の反応に基づいた診断とケアが進んでおり、
補聴器や音響療法、心理療法などまで
多様な選択肢があります。


また、東洋医学では全身のバランスから捉えることで、
体質改善を通じて根本からのアプローチも可能です。
特に慢性的な耳鳴りで
「もう慣れるしかないのか」と感じている方にこそ、
東洋医学の視点は希望となるかもしれません。
「今の自分の状態を丁寧に見つめ、体質に合ったケアをしていく」
その積み重ねが、やがて
”音が気にならなくなる日”に
つながるのではないでしょうか。

ご自身の状態に合った方法を見つけるためにも、
信頼できる専門家に一度ご相談されることをおすすめします。

もちろん、当院へもご相談ください。

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鍼灸 縁庵

住所:大阪府茨木市永代町6-19 近藤ビル402

電話番号:090-3890-4915

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