【嘔吐(おうと)】その原因と対策|東洋医学と西洋医学の視点から

query_builder 2025/05/22
茨木_鍼灸東洋医学
嘔吐イメージ画像


前回は「嘔気」…つまり吐き気について綴りました。

「吐き気が続く…その原因はストレス?それとも胃の不調?|“嘔気”を西洋医学と東洋医学の視点からやさしく解説」


今回は実際に吐いてしまう…

「嘔吐」について西洋医学的視点、東洋医学的視点の双方から解説していきます。


嘔吐とは?―吐き気との違いとともに

まず「嘔吐」とは、

胃の内容物が逆流して口から排出される現象を指します。


「吐き気(嘔気)」はその前段階の“吐きたくなる感じ”で、

必ずしも実際に吐くわけではありません。


嘔吐という症状は、

食べすぎや胃腸炎などの消化器のトラブルだけでなく、

ストレス・自律神経の乱れ・ホルモン変化・内耳の異常など、

全身にかかわる問題の表れであることもあります。


原因がわからないまま、薬だけで対処していても根本的な改善にはつながらず、そのまま慢性化すると、食欲不振・体力低下・メンタル不調といった悪循環に陥ってしまう可能性があります。


東洋医学の古典の

『医経溯洄集(いけいそかいしゅう)』には


「それ嘔は、東垣の謂うところの声物兼ねて出でるものなり。 吐は、東垣の謂うところの物出て声なきものなり……」


と記載があります。


※東垣=李東垣(りとうえん):金元時代に活躍し、『内外傷弁惑論』『脾胃論』『蘭室秘蔵』などの著作を残した湯液家。


つまり…

「嘔」:声と共に吐瀉物があるもの

「吐」:声は出ないが吐瀉物があるもの

ということで、

どちらにせよ吐瀉物がある場合は現代でいう嘔吐の範疇です。


嘔吐と悪心(嘔気)は臨床的にもよく同時に生じます。


悪心は嘔吐の初期症状であり、

嘔吐には悪心が伴うことが多いことに対し、

悪心には嘔吐を伴うとは限りません。


当たり前ですけれどもね。

では、解説していきましょう。


【西洋医学的見解】からみた嘔吐

嘔吐のメカニズム

嘔吐は、脳の延髄にある「嘔吐中枢」が刺激されることで起こります。


刺激の原因は以下の4つの経路に分類されます。

  1. 消化管からの信号
    胃炎、食中毒、過食、アルコールなど
  2. 内耳からの信号
    乗り物酔い、メニエール病など
  3. 中枢神経系からの信号
    頭部外傷、脳腫瘍、偏頭痛、緊張など
  4. 化学受容器誘発帯(CTZ)
    抗がん剤、毒物、ホルモン変化(妊娠など)


つまり、「胃の問題」に限らず、

「脳や耳、ホルモンバランスの乱れ」など、

全身のさまざまな異常が原因となるのが西洋医学的な理解です。


治療と対処

嘔吐に対する治療と対処法は以下のようになります。


  • 原因除去が基本(例:食中毒なら安静と水分補給)
  • 制吐薬(ドンペリドン、メトクロプラミドなど)
  • 水分・電解質補給が重要(特に子ども・高齢者)


西洋医学では、嘔吐に対して

「どこが刺激されたか(脳・耳・胃など)」という

部位と機序から理解していきますが、

東洋医学では「なぜそのような反応が起こったのか?」

という体質や内在的なバランスの乱れにも注目していきます。


例えば、

水分や電解質がなぜ不足しやすいのか?

なぜ食中毒に当たりやすい体質なのか?

そういった背景も含めて、

全体像から考えていくのが東洋医学の特徴です。

では東洋医学的見解から、嘔吐を紐解いていきましょう。


【東洋医学的見解】からみた嘔吐

東洋医学では、嘔吐は

「中焦(ちゅうしょう)の不調和」や

「気の逆流(気逆)」と捉える場合が多いです。


代表的な原因を以下に整理します。


弁証 症状の特徴 主な原因
胃寒 冷えた飲食後に悪化。嘔吐と共に冷え、腹痛あり。 冷飲食、外寒の侵入
胃熱 胃がつかえ、口が苦く、口臭や便秘を伴う 油膩物、辛い物、酒などの摂り過ぎ
肝気犯胃 イライラ・緊張・ストレスと連動し、胸脇苦満(季肋部の苦しさ) 情緒ストレス
痰飲内停 吐いた後にスッキリせず、痰が絡む感じがある。 胃腸虚弱+水湿停滞
脾胃虚弱 慢性的、食後に嘔気。食欲不振・倦怠感 体質・病後の体力低下


お気づきの方もいるかと思いますが…

「悪心(嘔気)」と弁証分類が同じなのですよね。


つまり、東洋医学的にも

「悪心は嘔吐の初期症状」として考え、

悪心が進展すると、嘔吐になる。

としているということです。


故に治則治法も基本的には同じになってきます(補瀉の程度には変化が生じる場合がありますが)。


また、嘔吐を繰り返す場合は、

胃陰を消耗することで相対的に陽が強くなり、

虚火が発生し、さらに虚火が胃陰を損耗して…


という悪循環が発生してしまいます。

難病とされる「周期性嘔吐症(自家中毒症)」の

発症直後などはこのようなメカニズムで体力を消耗しているわけです。


発症後は速やかに胃陰を回復させるような治療を行い、

さらに繰り返すことを抑えてあげる必要があるわけです。


「病院では異常がないのに、どうしても吐き気が続く…」 「ストレスが溜まると、胃のあたりがムカムカしてくる…」


そんな方は、もしかすると体質や気の巡りの乱れが原因かもしれません。


東洋医学的な視点で自分の体を見つめ直すと、

新たな改善の糸口が見えてくることもあります。


嘔吐や吐き気の背景には、さまざまな要因が関わっています。


西洋医学だけでなく、東洋医学の視点も取り入れて、

自分に合ったケアを見つけてみませんか?

「ただ薬で抑えるだけ」ではなく、

「なぜ今、吐き気が出ているのか?」を理解することが、

あなたの心と身体を整える第一歩になるかもしれません。


【まとめ】

嘔吐は、身体が「何かおかしい」と教えてくれるサインでもあります。


見落とさず、怖がらず、まずはじっくりと自分の身体に向き合ってみましょう。


どんな治療が合うかは人それぞれです。


体質や生活環境に応じた施術で、

内側から整えるアプローチもあります。


もし「原因不明の嘔吐や吐き気」にお悩みであれば、

鍼灸という選択肢も視野に入れてみてください。

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鍼灸 縁庵

住所:大阪府茨木市永代町6-19 近藤ビル402

電話番号:090-3890-4915

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