「最近、頭がズーンと重い…」
「目の奥がじわじわ痛む…」
そんな頭痛にお悩みではありませんか?
気圧の変化、寒暖差、ストレスや自律神経の問題…
原因として言われることは様々で、「いつもの頭痛だし」と見過ごされがちですが、
実はこの頭痛、西洋医学でも東洋医学でも奥深いテーマなのです。
「病院で検査しても原因がはっきりしない」「薬を飲んでもスッキリしない」──
そういった声を、当院でも本当によく耳にします。
この記事では、東洋医学の視点から頭痛の原因を
「内因」と「外因」に分け、
体質タイプ別の養生法、
漢方処方の考え方、
鍼灸によるアプローチまで
まとめてお伝えしていきます。
まずは押さえておきたい ─ 頭痛の大きな2分類
東洋医学の話に入る前に、現代医学的な分類を簡単に整理しておきましょう。
一次性頭痛(慢性・繰り返し型)
脳や血管などに明確な異常がないのに起こるもの。
鍼灸の適応になるのはこちらです。
脳内の血管拡張が関与し、音や光に敏感になったり吐き気を伴うことも
目の奥をえぐられるような痛みと表現されることが多い
二次性頭痛(病気に伴う頭痛)
脳出血、脳腫瘍、髄膜炎など、命に関わる疾患が原因の場合。
突然の激痛・意識障害・発熱などを伴う場合は要注意です。
悠長に鍼灸院とか行っている場合じゃないやつですね。
一刻も早く病院へ行きましょう。
⚠ 重要
手足のしびれ、呂律が回らない、物が二重に見える(複視)、突然の激しい頭痛、意識障害、高熱を伴う頭痛は、脳血管障害など重篤な疾患の可能性があります。すぐに医療機関を受診してください。
東洋医学では頭痛をどう考える?
東洋医学では、頭痛は大きく
「内因(感情・体質に由来するもの)」と
「外因(自然界の邪気によるもの)」の2つに分けて考えます1,2)。
内的要因のものは「裏証」(病の位置が深い)、
外的要因のものは「表証」(病の位置が浅い)とも呼ばれます。
| 分類 | 原因 | 関与する臓腑・邪気 |
|---|---|---|
| 内因(裏証) | 感情・体質・疲労・飲食の乱れ | 肝・脾・腎の失調 |
| 外因(表証) | 自然界の邪気 (風・寒・熱・湿) |
風寒邪・風熱邪・風湿邪 |
では、それぞれのタイプを詳しく見ていきましょう。
【内因①】肝の失調 ─ ストレスや怒りで気が頭に昇る
東洋医学で「めまいは肝に属す」と言われるように、頭痛もまた「肝」の失調と深い関係があります1,2)。
ここでいう「肝」は、西洋医学の肝臓とは概念が異なります。
東洋医学の肝の臓は、気の流れをスムーズに調節する「疏泄(そせつ)作用」を担い、感情のコントロールやストレス反応と深く関わる臓です。
ストレスや精神的過労により肝の気がスムーズに流れなくなると(肝気鬱結)、やがて気が上昇して頭部に熱がこもり、「肝陽上亢(かんようじょうこう)」の状態になります。
これが頭痛として現れるのです。
慢性化してストレスがさらに強くなると、「肝気鬱結」が「化火」して、より強い頭痛を引き起こすこともあります。
気はガスのようなもので、動きを止めて充満し続けると、やがて爆発するかのように火が起こる…
というイメージです。
こんな症状が特徴
🍃 肝タイプの養生法
ポイントは「肝の疏泄(=気の流れ)をスムーズに」「気を上に昇らせすぎない」こと。
全身のリズム運動は肝の気を流してくれます
酸味は肝の気を伸びやかに整えてくれます
肝は目を栄養しているため、目の酷使=肝の疲れに直結します。
就寝30分〜1時間前には使用しないようにしましょう
💊 参考:漢方処方の例
釣藤散(ちょうとうさん):「慢性に続く頭痛で中年以降、または高血圧の傾向のあるもの」に対して使用されるとされる処方です3)。
朝起きたときに頭が痛い、ストレスで頭がガンガンするタイプに処方されることがあります。
加味逍遙散(かみしょうようさん):「体質虚弱な婦人で肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状、ときに便秘の傾向のある」方の諸症に対して使用されるとされる処方です4)。
肝気の鬱滞によるイライラ、肩こり、目の疲れ、PMSなどの不調を伴う方に処方されることがあります。
【内因②】脾の失調 ─ 胃腸の弱りで水湿が溜まり重だるく痛む
「脾」は消化器全般を司り、飲食物からエネルギーを作り出す臓です。
飲食の不摂生や思い悩みにより脾の機能が失調すると、体内の水湿(余分な水分)の処理がうまくいかなくなり、湿邪が停滞します1,2)。
東洋医学では古くから「痰なくして眩暈(めまい)なし」と言われるように、水湿の停滞は頭部症状と密接な関係があります。
こんな症状が特徴
🍃 脾タイプの養生法
胃腸をいたわり、水湿を溜めないことが大切です。
💊 参考:漢方処方の例
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう):「胃腸虚弱で下肢が冷え、めまい、頭痛などがある者」に対して使用されるとされる処方です5)。
脾の運化機能が弱まり、生じた湿が痰濁を生じることで頭痛やめまいが出るタイプに処方されることがあります。
【内因③】腎の失調 ─ 加齢や疲労で頭に栄養が届かない
「腎」は生命力の源であり、先天的なエネルギー(精)を蓄える臓です。
加齢や慢性的な疲労で腎精が消耗すると、頭に十分な栄養が届かなくなり、慢性的な虚性の頭痛が起こります1,2)。
肝の精神的疲労由来の頭痛とは異なり、こちらは肉体的な疲労由来のもの。
教科書的には「空虚感のある頭痛」と表現されますが…イメージがつきづらい(笑)。
なんとなくぼんやり痛い、ズーンとハッキリしない痛さ…に相当するのではないかと思います。
こんな症状が特徴
🍃 腎タイプの養生法
無理をしない生活と腎を補う食養生がポイントです。
外邪による頭痛 ─ 風邪(ふうじゃ)は「百病の長」
次は外因(表証)の頭痛です。
東洋医学では「風邪(ふうじゃ)は百病の長」といわれ、しばしば他の邪気を引き連れてきます。
体質や季節の影響により組み合わせが変わり、それぞれ異なった症状が現れます(参考文献①②)。
東洋医学では、これら表証は現代医学でいう「カゼ症候群」に相当するものと認識する場合が多いです。
風寒邪 ─ 冷えによる締めつけるような頭痛
寒さや冷風の影響を受けて身体が冷えることで起こる頭痛です。
後頭部〜首筋が突っ張るような、あるいは締められるような痛みが特徴。
温めると楽になることが多いです1)。
一般的な"カゼ引き"の際はこちらに該当する場合が多いように思います。
特に一度暖かくなった後、また寒くなったときに風寒邪の影響を受けやすいです。
💊 参考:漢方処方の例
葛根湯(かっこんとう):「自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるもの」の感冒等に対して使用されるとされる処方です6)。
カゼの引き始めで、汗をかいておらず首〜肩がこわばるタイプに広く処方されます。
そのほか、より体力が充実して悪寒・関節痛が強いタイプには麻黄湯(まおうとう)7)、逆に体力がなく自然と汗が出ているタイプには桂枝湯(けいしとう)8)が用いられることがあります。
同じ「風寒邪」でも体質によって処方が変わるのが東洋医学の面白さです。
風熱邪 ─ 熱を伴うズキズキとした頭痛
熱邪、いわゆる熱性のカゼの初期などに頭部がズキズキと比較的強く痛むもの。発熱・喉の痛みを伴うのが特徴的です。こちらは冷やすことで緩解しやすいです1)。
💊 参考:漢方処方の例
銀翹散(ぎんぎょうさん):中医学では風熱邪による感冒(喉の痛み、発熱、頭痛)の代表的処方として広く知られています。
日本では医療用エキス製剤としてのツムラ製品はありませんが、一般用医薬品として各社から販売されています1)。
💊 参考:漢方処方の例
銀翹散(ぎんぎょうさん):中医学では風熱邪による感冒(喉の痛み、発熱、頭痛)の代表的処方として広く知られています。
日本では医療用エキス製剤としてのツムラ製品はありませんが、一般用医薬品として各社から販売されています1)。
風湿邪 ─ 天候に左右される重だるい頭痛
外部の湿気の影響を受けるため、雨天時や湿度の高い日(梅雨・台風時)に症状が出やすいのが特徴。
重だるい、ボーッとするような痛みです。
天気が回復するか、排便により体内の痰濁を排出することで緩解することもあります1,2)。
脾が弱い方は外部の湿邪の影響も受けやすくなるため、内因②の脾タイプと重なる場合も少なくありません。
そのほか:瘀血(けつお)タイプの頭痛
上記の分類に加えて、「瘀血」(血の滞り)による慢性的な頭痛もあります。
血の巡りが悪くなることで頭に重さや締めつけ感が生じるもので、頭部外傷の後遺症や、夜間に増悪しやすい、冷えや月経不順を伴うケースで見られることがあります2)。
💊 参考:漢方処方の例
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):「体格はしっかりしていて赤ら顔が多く、腹部は大体充実、下腹部に抵抗のある」方の「更年期障害(頭痛、めまい、のぼせ、肩こり等)」等に対して使用されるとされる処方です7)。
※漢方薬はいずれも参考として紹介しています。
同じ"頭痛"でも体質によって選ぶ処方が変わりますので、必ず医師や薬剤師にご相談のうえ、ご自身に合ったものを選んでいただくようお願いいたします。
自己判断で服用すると効果が出なかったり、かえって体調を崩すこともあります。
補足:なぜ春に頭痛が増えるのか?
臨床の現場では、春先に頭痛を訴える方が特に多い印象があります。
東洋医学では春は五行で「木」にあたり、「肝」が活性化される季節です。
気が上部に昇りやすくなり、それにストレスや疲労が加わることで肝気がスムーズに流れなくなり、頭痛が現れやすくなるのです。
また、寒暖差が大きい時期には風寒邪の影響を受けた頭痛もチラホラと。
特に一度暖かくなった後にまた寒くなったときが要注意です。
朝晩と日中の気温差がありますので、起床時に「寒っ!」とならないよう就寝時の服装にも気を配ってあげてくださいね。
鍼灸ではどのようにアプローチするか?
鍼灸の場合も漢方と同じです。
頭痛の出方や他症状はどうなのか?を総合的に考えて
「弁証」し、病の本質を捉えて施術を行います。
東洋医学では
望診(視る)、
聞診(嗅ぐ・聞く)、
問診(話を聴く)、
切診(触れる)の4つを駆使して
身体全体のバランスを診ます。
これを「四診(ししん)」といいます。
鍼と灸を用いて気の巡りを整えたり、
五臓の調整をおこなったり…
身体の反応をみながら、
経穴(ツボ)の状態に合わせて繊細に処置を施します。
「まさに今、痛みが出ている」という急性期だけでなく、再発予防・体質改善にもつながりますので、定期的に施術を受けることをおすすめしています。
人は毎日考えて、動いて…と生きている限り何かしらの身体への負担があるわけですから、車や機械と同じでメンテナンスは重要です。
※誤治を防ぐため、具体的なツボの名称はここでは記載いたしません。ご了承ください。
📋 薬を手放せなかった患者さんの頭痛がピタッと止まった!?
当院であった実際のケースをご紹介します。
慢性的な頭痛に悩まされ、いつも頭痛薬を服用していた看護師の方がいました。
お仕事柄、夜勤や気の張る場面も多く、常に体が緊張状態にあるような印象を受けました。
いわゆる自律神経が乱れている状態ですね。
初回来院時、鍼灸施術に加えて
「毎日30分でいいので、ゆったり散歩してみませんか?」と提案しました。
身体を動かす習慣をつけることで「気の巡り」を助け、五感を使って自然に触れることで「肝」の高ぶりをやわらげることを意図したものです。
すると、施術と散歩を継続していただいた結果、1ヶ月後には「そういえば、頭痛が出ていません」とご本人が驚かれるほどの変化がありました。
それ以降も定期的に施術を受けていただいておりますが、たまにストレスが強くかかった際や、悪天候時、月経前などに頭痛が出ることもあるものの、「程度は以前よりかなり楽になっている」とのことです。
※体質や生活リズム・環境、ストレス状況、運動習慣などにより効果には個人差があります。
まずは「深呼吸」から始めてみませんか?
「養生法がたくさんあって、どれも難しい!」
という方は(本当は頑張ってほしいですが…笑)、
せめて深呼吸だけでも日常に取り入れてみてください。
緊張状態が強い(肝気が高ぶっている状態)と、自然と呼吸は浅く、速くなっています。
浅く速い呼吸は自律神経のバランスを乱しやすく、頭痛の引き金にもなりかねません。
特に意識してほしいのは「吐く息を長くする」こと。そして鼻で呼吸しましょう。
鼻呼吸は横隔膜を動かす腹式呼吸がしやすくなります。
では、
鼻から4秒息を吸って…
鼻から8秒かけて息を吐いてみてください。
いかがでしょうか?
呼吸に意識を向けていると、自然と気持ちが落ち着いてくるはずです。
鍼灸の現場でも、お臍の下あたりにある「臍下丹田(せいかたんでん)」を意識した腹式呼吸を指導することがありますが、これがまたいいんです。
頭にのぼった"気"を下に降ろしてくれる感覚は、心身ともに非常にリラックスをもたらしてくれます。
まとめ ─ 頭痛の背景を知って、根本から整えよう
最近では「頭痛=ストレス」と言われることも多いですが、それだけでないことがお分かりいただけたでしょうか?
東洋医学では、「めまいは肝に属す」と言われるのと同様に、頭痛もまた体質・臓腑・季節・外邪と多角的に捉えます。
薬で一時的に頭痛が治まったとしても、身体の中で"巡りの悪さ"や"外邪からの影響"がくすぶっているかもしれません。
ちょっとした不調でも「がまん」や「気合い」で乗り切るより、自身の身体の声に耳を傾け、日々の養生で根本から整えていく方が、結果的に楽になることが多いです。
頭痛を「薬で抑える」のではなく、「そもそも頭痛が出にくい身体」に整えていく。
そんな選択肢のひとつとして、鍼灸や漢方などの東洋医学的なアプローチがあることを、ぜひ知っていただけたらと思います。
思い当たることがあれば、ちょっとだけ呼吸を深くしてみたり、梅干しをひと粒食べたり、軽く散歩を始めてみてください。
小さなことでも、「自分の身体を大事にできたな」と思える時間が、少しずつ確かな変化につながっていくと思っています。
⚠ 重要なお願い
頭痛が長期間続く場合や、突然の激しい頭痛・意識障害・手足のしびれ・呂律が回らない・物が二重に見えるなどの症状を伴う場合は、脳血管障害など重篤な疾患の可能性があります。まずは医療機関(神経内科・脳神経外科など)を受診されることをおすすめいたします。
めまいの原因を東洋医学で読み解く|6つの体質タイプと養生法
頭痛と併発しやすい「めまい」についても、東洋医学の視点から6つのタイプに分類し、養生法をご紹介しています。
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