五十肩の原因と対策|東洋医学の体質タイプ別アプローチ

query_builder 2026/05/13
茨木_鍼灸東洋医学
五十肩 イメージ画像

「腕が上がらなくなってきた」
「夜中に肩が痛くて目が覚める」
「服の着替えがつらい」
——そんなお悩みをお持ちではないでしょうか。

40〜60代に多く見られる五十肩(肩関節周囲炎)は、「ほっておけばいつか治る」と思われがちですが、適切にケアしないと拘縮(関節の固まり)が長引き、日常生活に大きな支障をきたします。

実際、当院にも「1年以上腕が上がらないまま」という方が来院されることがあります。

この記事では、五十肩の原因と経過を西洋医学の観点から整理したうえで、東洋医学的な体質タイプ別の見立て・養生法と、縁庵での鍼灸アプローチについてお伝えします。

👉 肩こりの原因と対策|東洋医学から読み解く「こりの正体」もあわせてご覧ください。


五十肩とは何か(西洋医学)

「五十肩」は医学的には肩関節周囲炎(けんかんせつしゅういえん)と呼ばれる疾患の俗称で、肩関節を取り巻く組織(関節包・腱・筋肉・滑液包など)に炎症が起こり、痛みと可動域の制限をきたす状態です。

40代に多いものを「四十肩」、50代に多いものを「五十肩」と呼び分けることがありますが、医学的には同じ病態を指します。特に、関節包そのものが炎症を起こして縮んでしまうタイプを癒着性関節包炎(adhesive capsulitis)とも呼びます。

五十肩は一般的に以下の3つのフェーズをたどることが知られています。

① 急性期(炎症・疼痛期)
数週〜数ヶ月続く時期で、肩の痛みが強く、夜間痛(横になると痛みが増す)が特徴的です。
安静にしていても痛む「自発痛」があり、この時期に無理に動かすと炎症が悪化することがあります。

② 拘縮期(凍結・可動域制限期)
急性期の炎症が落ち着いてくる一方で、関節包が縮んで固まり、肩の動きが著しく制限されます。
「腕が上がらない」「後ろに手が回らない」といった症状がこの時期に強まります。数ヶ月〜1年以上続くこともあります。

③ 回復期(解氷・改善期)
徐々に炎症が引き、可動域が回復していく時期です。
自然に改善することが多いものの、回復に1〜3年かかることもあり、適切なリハビリが回復を大きく左右します。

原因は完全には解明されていませんが、加齢による肩関節周囲の組織の変性、血流の低下、ホルモン変化(特に女性では閉経後に多い)、糖尿病などとの関連が指摘されています。

こんな症状は要注意:他の肩疾患との鑑別を
五十肩と似た症状でも、腱板断裂(腱板断裂は手術が必要になる場合があります)、石灰沈着性腱板炎(石灰の結晶が沈着して激烈な痛みを起こす)、肩関節周囲の腫瘍などが原因の場合があります。

強い痛みが突然始まった、発熱を伴う、上肢のしびれがある、夜間の痛みが非常に強い場合は整形外科への受診をおすすめします。


東洋医学と肩の考え方

東洋医学では、五十肩にあたる病態を「肩痺(けんぴ)」あるいは「漏肩風(ろうけんふう)」と呼び、主に「気血の不通(流れの停滞)」として捉えます。

古典には「痛みは不通より生ず(通則不痛、不通則痛)」という言葉があり、気や血が滞ることで痛みが生じるという考え方が根底にあります。


肩部の気血の流れを妨げる原因は大きく2つあります。

ひとつは外から邪気(風・寒・湿など)が侵入するもの(外因)、もうひとつは内から気血が不足したり滞ったりするもの(内因)です。

加齢とともに「肝(かん)」と「腎(じん)」の働きが衰えると、筋や骨を栄養する力が低下し、外邪の影響も受けやすくなります。これが五十肩の好発年齢と重なります。

東洋医学では同じ「五十肩」という診断であっても、「なぜ、その方の肩に不通が起きているのか」を体質・症状から丁寧に読み解きます。

これを弁証論治(べんしょうろんち)といい、「同病異治(どうびょういち)——同じ病名でも原因が違えば治療も変わる」という考え方を大切にします。


体質別の五十肩タイプ

東洋医学的に見た五十肩には、主に3つの体質タイプがあります。ご自身に近いものを参考にしてみてください。


風寒湿痺型(ふうかんしつひがた)

外部から風・寒・湿の邪気が肩に侵入し、気血の流れを阻害するタイプです。
東洋医学では、寒さは気血を凝縮させる性質があるため、冬の冷えた空気やエアコンの冷風、雨・湿度の高い環境が症状を引き起こしたり悪化させたりします。
川の水が冬の寒さで凍り始めて流れが止まるイメージです。

こんな症状が特徴
冷えると痛みが増す、温めると楽になる、天気が悪い日に症状が悪化する、肩まわりが重だるい感じがある、寒い環境や冷房が苦手。
比較的急に発症したケースや、冷えのきっかけがあって始まった場合に多く見られます。

養生のポイント
とにかく「温める」ことが最優先です。
肩や首まわりを冷やさないよう、夏場でもエアコンの風が直接あたらない工夫を。
入浴時は肩まで浸かる全身浴で血行を促しましょう。

生姜・ネギ・シナモンなど温性の食材を日常的に取り入れるのもおすすめです。
就寝時は肩が冷えないよう、タオルを巻く・薄手のジャケットを羽織るといった工夫も有効です。

参考:漢方処方の例
風寒湿による痺症に対しては葛根湯(かっこんとう)や防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)などが用いられることがあります。
また、冷えが強く慢性化している場合には独活寄生丸(どっかつきせいがん)のような補腎散寒(ほじんさんかん)の方剤が参考にされます。

※体質によって処方は変わりますので、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

気滞血瘀型(きたいけつおがた)

ストレスや過労、長時間の同一姿勢(デスクワーク・スマートフォンの使いすぎなど)により気の巡りが滞り、やがて血の流れも悪くなるタイプです。

「気が止まれば血も止まる」という考え方が基本で、川の流れが詰まってよどんでいくイメージです。

外傷(転倒・ぶつけるなど)がきっかけになることもあります。

こんな症状が特徴
刺すような・引っかかるような固定した痛み、夜間(特に明け方)に痛みが強まる、動かし始めは痛いが少し動かすと楽になる、同じ姿勢を続けると痛みが増す、患部を押すと強く痛む。
ストレスが多い時期に悪化しやすいのも特徴です。

養生のポイント
気の巡りを整えることが大切です。
ゆったりとしたストレッチや太極拳、ヨガなど、呼吸と合わせたゆっくりした動きが効果的です。

同じ姿勢を長く続けることを避け、1時間に1度は肩まわりを動かすようにしましょう。

食材としては、ターメリック(うこん)・青魚・なす・玉ねぎなど、血の巡りを助けるものがおすすめです。ストレスケアも治療の要になります。

参考:漢方処方の例
気滞血瘀の痺症には桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や血府逐瘀湯(けっぷちくおとう)などが用いられることがあります。

※体質によって処方は変わりますので、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

肝腎不足型(かんじんふそくがた)

加齢や長年の過労・慢性疾患などにより「肝(かん)」と「腎(じん)」の働きが衰えるタイプです。
東洋医学では「肝は筋を主り(つかさどり)、腎は骨を主る」とされており、肝腎が不足すると筋や関節を栄養する力が弱まります。
五十肩がこの年代(40〜60代)に多い大きな理由のひとつがここにあります。
腎精が20歳前後でピークを迎え、そこから少しずつ衰えていく——東洋医学的には「自然な老化の流れ」に伴う肩の不調です。

こんな症状が特徴
ぼんやりとしただるい痛みが慢性的に続く、痛みは比較的軽いが可動域の制限が主な悩み、疲れると症状が悪化する、腰や膝も同時に弱さを感じる、耳鳴りや頭の重さを伴うことがある。
「じっくり悪くなってきた」という経過をたどることが多いです。

養生のポイント
肝腎を補い、筋と関節に栄養を届けることが基本です。腎を補う「黒い食材」(黒豆・黒ゴマ・黒きくらげ・クルミ)や、肝を養う食材(レバー・ほうれん草・なつめ・クコの実)を取り入れましょう。
過労を避けて十分な睡眠を確保することも重要です(肝は夜に血を蓄える臓腑)。
無理をした後の症状悪化を繰り返す場合は、休息のタイミングを見直してみてください。

参考:漢方処方の例
肝腎不足の痺症には独活寄生丸(どっかつきせいがん)や六味地黄丸(ろくみじおうがん)などが参考にされます。

※体質によって処方は変わりますので、必ず医師・薬剤師にご相談ください。


縁庵での鍼灸アプローチ

鍼灸 縁庵では、五十肩に対しても東洋医学的な四診(望診・聞診・問診・切診)を丁寧に行い、舌・脈・お腹・患部の状態からお一人おひとりの体質と病態を読み取ります。「同じ五十肩でも、その方がなぜ今この痛みを抱えているのか」をきちんと見極めることが、縁庵の施術の起点です。


急性期には、局所の強い刺激は逆効果になる場合があります。

患部を直接触れずに、遠隔の経穴(ツボ)に鍼を施すことで炎症反応を落ち着かせ、痛みを和らげることを優先します。

拘縮期・回復期には、肩まわりの気血の流れを促し、関節包の柔軟性を取り戻すようなアプローチを加えていきます。

また、五十肩は経過が長い疾患です。

急ぎ、焦って無理をすることは禁物です。

施術を通じて「今どの段階にあるか」を一緒に確認しながら、ご自身のペースで丁寧に整えていきましょう。

夜間痛がひどくて眠れないという状態が続くと、睡眠不足から自律神経が乱れ、痛みの感受性がさらに上がる——という悪循環が起きます。

「がまん」で乗り越えようとせず、「痛くて眠れない」と感じたら、早めにご相談ください。

まず夜眠れるようにすることを最優先に考えます。

五十肩でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
鍼灸 縁庵では、体質に合わせた施術と養生のご提案を行っております。

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まとめ:肩の痛みと養生

五十肩(肩関節周囲炎)について
急性期(炎症・夜間痛)→ 拘縮期(可動域制限)→ 回復期(改善)の3段階をたどります。

他の肩疾患(腱板断裂・石灰沈着性腱板炎など)との鑑別が重要なため、強い痛みや手のしびれがある場合はまず整形外科への受診が必要です。

東洋医学的な3タイプ
風寒湿痺型(冷え・天候で悪化)、気滞血瘀型(刺すような夜間痛・ストレスで悪化)、肝腎不足型(加齢による慢性的なだるい痛み)に分けて弁証します。同じ五十肩でも体質によってアプローチが変わります。

共通して大切な養生
患部を冷やさない、無理に動かさない(特に急性期)、十分な睡眠をとる、ストレスをためない、体質に合った食養生を継続する。

「がまんしなくていい」——痛みが長く続くなら、ぜひ一度ご相談ください。

五十肩は「じっくりつきあっていく」疾患です。

急いで無理をすることは返って遠回りになりかねません。

身体の声に耳を傾けながら、一緒に相談して丁寧に整えていきましょう。


参考文献

1) 張伯臾 主編『中医内科学』上海科学技術出版社, 1988年 — 痺証(風寒湿痺・気滞血瘀・肝腎不足)の弁証分型.
2) 趙金鐸 主編『中医症状鑑別診断学』人民衛生出版社 — 肩部疼痛の鑑別.
3) 神戸中医学研究会 編著『中医臨床のための方剤学』医歯薬出版, 2004年 — 各弁証タイプへの方剤応用.
4) 梁哲雄 編著『東洋医学概論(改訂第2版)』南江堂, 2015年 — 痺証の総論.

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鍼灸 縁庵

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