不妊症と鍼灸|東洋医学からの改善アプローチ
「なかなか赤ちゃんが授からない」
「病院で調べてもはっきりした原因がわからない」
——そんな悩みを抱えながらも、どこに相談すればいいかわからないまま日々を過ごしている方も多いのではないでしょうか。
不妊で悩むカップルは日本では約5〜6組に1組いると言われており、決して珍しいことではありません。
しかし原因が多岐にわたるだけに、「何から手をつければいいか」と途方に暮れることもあるでしょう。
この記事では、鍼灸師の立場から不妊症を東洋医学の視点で解説し、体質別のアプローチについてお伝えします。
今まで本当に頑張ってこられた。ご自身のペースで、一緒に体を整えていきましょう。
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不妊症とはどんな状態か
不妊症の定義と種類
日本産科婦人科学会は、不妊症を「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交渉を持ちながら、1年以上妊娠しない場合」と定義しています(2022年改定)。
不妊症には大きく2つのタイプがあります。
過去に一度も妊娠したことがない「原発性不妊」と、過去に妊娠・出産経験がありながら次の妊娠が成立しない「続発性不妊」です。
主な原因(西洋医学の視点)
不妊の原因は女性側・男性側・あるいは両者に存在することがあり、どちらか一方の問題とは言い切れないことが多いです。
女性側の主な原因:排卵障害(多嚢胞性卵巣症候群・高プロラクチン血症など)/卵管因子(卵管閉塞・卵管周囲の癒着)/子宮因子(子宮内膜症・子宮筋腫・子宮奇形)/卵巣予備能の低下/原因不明(機能性不妊)
男性側の主な原因:造精機能障害(精子の数・運動率・形態の問題)/精路通過障害/性機能障害
不妊カップルの約半数には男性側にも何らかの原因が関与しているとされており、パートナーと一緒に検査・治療に向き合うことが大切です。
不妊症の検査と治療方法
西洋医学での検査と治療
不妊治療は大きく「一般不妊治療」と「生殖補助医療(ART)」に分けられます。
多くのケースでは、より身体への負担が少ない方法から段階的に進められます。
タイミング法は、排卵日を推定して性交渉のタイミングを合わせる最もシンプルな方法です。排卵障害がある場合は排卵誘発剤(クロミフェンなど)を用いることもあります。
人工授精(AIH)は精子を子宮内に直接注入する方法で、タイミング法で妊娠に至らない場合に選択されます。
体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)は卵子と精子を体外で受精させ子宮内に戻す生殖補助医療で、近年は保険適用が拡大し利用しやすくなっています。
院長・日野より
不妊治療を受けながら当院に通われる方は少なくありません。鍼灸は不妊治療の「代わり」ではなく「補助」として位置づけていただくのが現実的だと思っています。
血流を整え、ホルモン環境へのアプローチを重ねながら、妊娠しやすい体の土台を作っていくこと——
それが鍼灸の役割だと考えています。
「採卵の周期に合わせて通いたい」「移植前に体を整えたい」というご相談もお気軽にどうぞ。
東洋医学から見た不妊症
腎と生殖機能の関係
東洋医学では、生殖機能のカギを握るのは「腎(じん)」です。腎は「先天の本」とされ、成長・発育・生殖のすべてに関わる臓腑と考えられています。
古典医書「黄帝内経素問」の「上古天真論篇」には、女性の体の変化が7歳を周期に記されており、「天癸(てんき)」と呼ばれる生殖に欠かせない精微物質が充実することで月経が始まり妊娠が可能になると述べられています。
逆に腎の力が衰えると天癸が尽き、生殖能力も低下するとされています。
また、子宮(胞宮)には「衝脈(しょうみゃく)」「任脈(にんみゃく)」という2つの重要な経脈が通っており、これらが充実することで妊娠しやすい状態が整うと考えます。
不妊症を東洋医学的に捉えると、主に以下の4つの体質パターンに分類できます。
①腎虚タイプ(腎陽虚・腎陰虚)
腎陽虚:「暖房が壊れた部屋にいるような状態」。
下腹部の冷え・強い疲労感・月経の遅れ・黄体機能不全がみられやすいタイプです。
卵巣機能の低下がみられる方に多くみられます。
腎陰虚:「冷却水が不足してエンジンがオーバーヒート気味な状態」。
卵巣予備能(AMH値)の低下・のぼせ・口の渇き・月経量の減少が特徴です。
加齢とともに起こりやすいタイプです。
②気滞血瘀タイプ
「川の流れが詰まって、淀んでいる状態」です。
子宮内膜症や卵管周囲の癒着と関連しやすく、強い月経痛・血塊の混じる月経・月経前のイライラが目立ちます。
ストレスの多い生活が続くと気の流れが滞り、血流も悪くなります。
③痰湿タイプ
「川底に泥が積もって流れが滞っている状態」です。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のような排卵障害と関連することがあります。
むくみやすい・太りやすい・月経不順(希発月経)・おりものが多いといった特徴があります。
脾(消化機能)の働きが弱まり、体内に余分な水分・汚れが溜まりやすい体質です。
④肝気鬱結タイプ
「交通渋滞で気の流れが動けない状態」です。
不妊治療中のプレッシャーや日常のストレスが積み重なり、気のめぐりが悪くなっているタイプです。
月経前の胸の張り・PMSが強い・気分の浮き沈みが激しいといった訴えが多くみられます。
実際の患者さんは、これらのパターンが単独ではなく複数重なっていることも珍しくありません。
「腎陰虚+肝気鬱結」「腎陽虚+気滞血瘀」といった複合タイプもよくみられます。
東洋医学では、この複雑な「証(しょう)」を丁寧に読み解き、そのときの体質に合った施術を行います。
鍼灸での改善アプローチ
縁庵での鍼灸施術について
当院では、問診・脉診(みゃくしん)・腹診などから総合的に判断し、体質パターン(証)を丁寧に見立て、その方に合った鍼灸施術を行います。
腎虚タイプには腎の機能を補う経穴を中心に、気滞血瘀タイプには気と血の流れを促すアプローチを。
痰湿タイプには脾の機能を整えて余分な水分代謝を助ける。
肝気鬱結タイプにはストレスで緊張した気の流れを解放するよう働きかけます。
当院が拠り所とする北辰会式の鍼灸では、極力少ない本数(場合によっては1本)で体全体のバランスを整えることを重視しており、身体への負担が少ないのが特徴です。
不妊治療(ART)と並行して通院される方には、採卵周期・移植周期に合わせた施術スケジュールのご相談も承っています。
「妊娠しやすい体の土台を整えたい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
焦る必要はありません。
ご自身のペースで丁寧に整えていくことが肝要です。
まとめ:養生と日常ケア
不妊症は原因が多岐にわたり、西洋医学的な治療が有効なケースも多くあります。
東洋医学では「腎虚」「気滞血瘀」「痰湿」「肝気鬱結」などの体質パターンを整えることで、妊娠しやすい体づくりへのアプローチが可能です。
鍼灸は不妊治療の補助として、体質改善・血流促進・ストレスケアを担うことができると考えています。
日常生活で意識していただきたいことをお伝えします。
冷えをなるべく避けましょう。
特に下腹部・腰・足首を冷やさないよう心がけることが、腎陽虚や気滞血瘀のタイプには大切です。
睡眠と生活リズムも重要です。
東洋医学では夜間(特に夜10時〜2時頃)を「陰を育てる時間帯」と考えており、この時間帯に深く眠ることが陰(腎精を含む)の回復を助けると言われています。
食事では、レバー・ほうれん草・クコの実・黒豆・黒ごまなど、東洋医学で「補血(血を補う)」とされる食材を意識的に取り入れてみてください。
そしてストレスとの向き合い方。
不妊治療は精神的な負担が非常に大きいものです。
「焦らなくていい」「一人で抱え込まなくていい」
——ご自身のペースで、一緒に身体を整えていきましょう。
鍼灸 縁庵(よすがあん)は、大阪府茨木市の東洋医学専門の鍼灸院です。
不妊・婦人科のお悩みもお気軽にご相談ください。
参考文献
1) 黄帝内経素問・上古天真論篇(古代中国, 著者不詳).
2) 景岳全書・婦人規 求嗣門(張景岳著, 1624年).
3) 傅青主女科・種子門(傅山著, 清代).
4) World Health Organization. Acupuncture: Review and Analysis of Reports on Controlled Clinical Trials. Geneva: WHO; 2002.
5) 公益社団法人 日本産科婦人科学会. 不妊症について(2022年改定定義).
鍼灸 縁庵
住所:大阪府茨木市永代町6-19 近藤ビル402
電話番号:090-3890-4915
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