気とはなにか? ― 東洋医学の概念と鍼灸の役目

query_builder 2026/02/27
茨木_鍼灸東洋医学
気の概念 蓮の花Ver.

先日、患者さんと少し話した内容になるのですが…
「先生、気とは結局なんなのですか?」
と質問されることがありました。


この手の質問、よくされるので解説していきたいと思います。


まず、東洋医学の考えでは人体というものは大まかに

1. 気(き)
目には見えないが、確かにあるエネルギーのようなもの。

2. 血(けつ)
栄養を含んだ赤い液体。血液とほぼ同義です。

3. 津液(しんえき)
血以外の液体。組織液や関節液、鼻水、涎(よだれ)などなど。

の3つの要素で構成されていると考えます。


これらが凝縮して形成されているのが五臓や六腑であったり、様々な器官。そして人体なのです。


…といった大雑把な説明は2〜3診目のお身体についての説明の際にさせていただいております。


ここでは更に噛み砕いていこうと思います。



実は身近な「気」

空気、蒸気、呼気・吸気といった言葉があるように、気は確かに存在し、存在するものの目にすることができない物質です。

これを古代中国では「質ありて形なし」と説かれておりました。


先程もいったように気は形なきものであり、エネルギー(パワー)のようなものです。


万物を形成する基本的な物質であり、凝縮すると形を成し、拡散すると再び形を失います。


また『黄帝内経 素問・宝命全形論』にはこうあります。

天地合気、命之曰人
(天地は気を合し、これを命じて人という)

― 『黄帝内経素問』宝命全形論篇


人は天と地の気が化合したものだと書いています。


つまり、天地(自然界そのもの)がいかに人体と関連が深いかがわかるかと思います。


人体においては肉体面のみならず、精神面も、更には潜在意識…

五神のような面さえも…つまり物質面、機能的な面までも「気」によって成り立っています。


五神についてはこちら

五臓と五神について〜精神と身体の密接な関係〜


そのほか…イメージしやすいものであれば、

「視線を感じる(視られている気がする)…。」
「なんかこの人とは気が合わないなぁ。」
「あんな事言われて…もう!気分が悪いわ!」

などなど。


普段から皆さん、実はよく使っている言葉ですし、実際に感じておられるのではないかと思います(笑)


目には視えなくても…確かにあるのです。


「人に指を刺すな!」と昔から言われるのは、この「気」が反応してしまうからなのですよね。


なんとなーく…おわかりいただけたでしょうか?


そう、なんとなーくでいいのです(笑)


ちなみに「氣」という漢字の成り立ちを辿ると、

"米を蒸したときの湯気=エネルギーを含んだ気体"

を象っており、まさに生命力の象徴です。


漢字の語源から見た「氣」の意味については、こちらの記事で詳しく書いています。
【東洋医学と漢字のロマン】氣(気)の語源とは?説文解字に見る"エネルギー"の意味


気の種類あれこれ

気にもさまざまな種類があります。


まずは大きく2つ。

正気(せいき)
人体のあらゆる正常な機能と、環境へ適応したり、外邪に抵抗したり、病から自然治癒する能力(自己調整)を含めた健康保持能力のことです。


邪気(じゃき)
病を引き起こすもの。
六気(りっき)や疫癘の邪(流行り病のようなもの)を含め、気血の停滞から発生する病理産物なども示します。

病というものは邪気が正気の働きを邪魔して、自然治癒力を弱めたり阻害することで起こると考えます。


大雑把に身体を正常に働かせる気(エネルギー)と、悪さをする気(エネルギー)と思っていただいて構いません。


先天の気と後天の気

そして、正気は以下の2つに分類されます。

先天の気
父・母より受け継いだもの。
出生時より存在し、腎に蓄えられる。
原気(元気)ともいう。
→ 生命エネルギーそのもの(人それぞれキャパシティが違う)


後天の気
出生後に獲得するもの。
飲食物より得た水穀の精微が、肺より吸入された天空の清気(清浄な空気)と合して生成される。
宗気(そうき)・営気(えいき)・衛気(えき)を含む。
→ 先天的エネルギーが枯渇しないように絶え間なく補充している。

持って生まれた気と、生きている中で補充する気ですね。


老化により胃の気が弱り、飲食を摂取できなくなり後天の気が練られなくなり、先天の気を削っていき…

先天の気が枯れてしまうと絶命します。


これが老衰による死亡ですね。


人間の正常な形での"寿命"となります。
これまでに病を起こさず、健康に生きることがまさしく"天命を全うした"ってやつですね。

(現代医学の進歩により延命治療の技術が進んで平均寿命が遥かに伸びていますが、これは天命と言えるのか?
…と、この話をすると長くなるので割愛します。笑)

後天の気は「飲食」と「呼吸」から生み出されます。

つまり、日々の食事が氣の生成に直結しているわけですね。

東洋医学では特に「米」が気を補い脾を助ける食材として重視されてきました。

現代栄養学の観点も含め、食と氣の関係についてはこちらの記事で詳しくお話ししています。
「氣」に「米」が含まれる理由 ― 東洋医学と現代栄養学から読み解く


後天の気 ― 宗気・営気・衛気

後天の気で3つの気が出てきましたので、次はこれを解説していきます。

1. 宗気(そうき)
心肺機能に関与。胸中に蓄えられ、血をダイナミックに循環させ呼吸や発声、身体を動かす働きをする。
→ 血液のポンプ作用を担うような動き+呼吸や発声。


2. 営気(えいき)
血液とともに脈中を流れて五臓六腑や身体の各組織を営養する。
→ 身体内の濡養(潤す・栄養を運ぶ)。


3. 衛気(えき)
脈外(身体のごく浅い部分)を流れることにより、外邪の侵入を防いだり、肌肉・皮毛を温めたり、腠理(毛穴)の開閉を調節して発汗による身体の陰陽調節を行い、体表を守る。
→ 外部からの防御。

そしてこの他にも五臓六腑の器質と機能を主る気があります。

臓気
心気、肝気、脾気、肺気、腎気、腎間の動気(※1)


腑気
胆気、胃気、中気(※2)

※1 … あらゆる生命活動に必要な原動力として、両腎の間で温存されている気のこと。
※2 … 消化・吸収・運輸・昇清・降濁を含めた脾の臓や胃・小腸の器質と機能を主る気のこと(中焦の気)。


これら紹介した正気が何らかの影響を受けて阻害され、機能失調を起こしたものが「病」へとつながるのです。


気の働きは? 7つの作用

気の各種類を紹介しましたが、その気なるものがそれぞれの場所でどんな働きをするのか?


大まかに分けて7つの作用があります。

推動作用
気自体が動こうとする性質があり、これにより血や津液を流動させる。
気の陽的作用の1つ。


温煦(おんく)作用
温める、あるいは冷えないように維持する。
陽的作用の1つ。


防衛作用
外邪や邪気の侵襲から防御する。
積極的に抵抗するという意味では陽的であり、常に守っているという点では陰的作用である。


固摂作用
血や津液を外に泄らさないようにする。
内を充実させるための力。
陰的作用の1つ。


気化作用
精・気・血・津液の間での物質代謝や相互に変化すること。
精や気は形なきエネルギーであり、凝縮すれば血や津液となって形をなす。
逆に形ある血や津液が無形エネルギーである精や気に変化することがある。
これらの変化を「気化」という。
両面の作用がある。


営養(えいよう)作用
血の作用とリンクする。

気の陰的作用によって血に化生し、その血の作用として営養機能を発揮する。
陰的作用の1つ。

上記のように、気には陽的作用と陰的作用があり、どちらの働きが強いかによって陽気か陰気かに分別されます。


動的であり、

静的であります。


陰陽のバランスと鍼灸の役目

これら陰陽が協調し、バランスを上手く取ることによって人体の健康が約束されます。

何かしらの影響により、この陰陽バランスが乱れることで気機(気の流れ)が失調し、人体のどこかで停滞が起こることで病が発生するのだと考えます(気滞病理学説)。

つまり鍼灸施術はこの気機の失調を改善する(気滞を除く)ことで、陰陽のバランスを整え、健康体へと持っていく…といったメカニズムなのですね。

大切なのは…鍼灸で施術者(私たち)が気を注入して治しているのではなく、鍼灸を施すことによって、患者さんの正気を助け、患者さんの身体自身が歪みを治そうと、気機の働きが活性化するからこそ改善していくのです。


だから、鍼灸に頼っていただくのは嬉しいのですが…

普段からしっかりと養生して、ちゃんと反応が出る身体づくりを怠らないようにもしていただきたいのです(笑)

参考文献

1.『黄帝内経素問』宝命全形論篇.
2.『黄帝内経素問』陰陽応象大論篇.
3.『黄帝内経霊枢』決気篇.
4.『黄帝内経霊枢』本蔵篇.
5. 神戸中医学研究会 編著『中医学入門』東洋学術出版社.
6. 日本中医学会 監修『中医基本用語辞典』東洋学術出版社.


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