なぜ月経の乱れ(生理不順)が起こるのか?西洋医学と東洋医学の両視点で解説

query_builder 2025/06/09
茨木_鍼灸東洋医学自律神経体質改善
月経周期の乱れ

「生理周期が急に短くなった」

「いつもより遅れてなかなか来ない」

「出血量が極端に増えたり減ったりして不安…」

そんな“月経の乱れ”は、心や体のSOSかもしれません。


とくに仕事のストレスや不規則な生活、年齢によるホルモン変動などが背景にあることも少なくありません。


女性の生理(月経)のリズムは、心身の健康状態を映し出すバロメーターともいわれます。


しかし、仕事のストレスや生活習慣の乱れ、加齢などさまざまな要因で “月経の乱れ”が起こることがあります。
(東洋医学では「経乱(経行先後無定期)」と呼ばれることもあります)


「生理があるべきタイミングで来ない・来すぎる」ことは、日常生活やQOL(生活の質)に影響し、大きなストレスをもたらすことが考えられます。


本記事では、まず西洋医学的な視点から「生理(月経)の乱れ」の概念や一般的な原因・診断・治療法を解説し、つづいて東洋医学的な視点も紹介します。


現在、女性疾患シリーズで更新しておりますので、他の記事も併せてご覧ください。


生理(月経)のメカニズムについて
生理(月経)を東洋医学と現代医学から考える

生理痛(月経痛)について
つらい生理痛の原因と対策|西洋医学と東洋医学から読み解く改善法

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初潮と閉経のしくみ―西洋医学×東洋医学(天癸)で学ぶ女性の節目―


西洋医学的な見解:月経の乱れ(生理不順)とは?

定義と主な症状

月経周期は通常、28日±7日程度とされています。

周期が25日未満と極端に短くなる場合は「頻発月経」

周期が35日以上と長くなる場合は「稀発月経」と呼ばれます


また、出血量が多い場合を「過多月経」、

出血量が少ない場合を「過少月経」と分類します。


さらに、

「経行先期(早期に来る)」

「経行後期(遅れて来る)」

といった症状も月経の乱れに含まれ、経血の色や性状(塊の有無など)からも原因の手がかりが得られます。


これらに伴い、

「生理痛がひどくなった」「不正性器出血を伴う」

「生理の間隔がまちまちである」といった訴えがあがりやすく、日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。


【月経不順の原因と検査】

月経不順の主な原因には以下のものがあります。


  • ホルモンバランスの乱れ
    視床下部-下垂体-卵巣系(HPG軸)の機能異常により、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌バランスが崩れると、排卵や子宮内膜の厚み調節に異常が生じ、周期が乱れます。


  • ストレス・生活習慣
    過度なストレス、睡眠不足、激しいスポーツを含む過度の運動、偏った食事(ダイエットも含む)は、視床下部に影響を与え、ホルモン分泌が乱れることで生理周期が乱れやすくなります。


  • 婦人科疾患
    子宮内膜症、子宮筋腫、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜ポリープなどの器質的疾患が月経時の出血量や周期に影響を与えることがあります。


  • 体重変動や極端な体脂肪率の低下
    急激な体重減少や過度のダイエットにより卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)の分泌が抑制され、無月経や稀発月経(少ない頻度でしか生理が来ない)につながります。


  • 薬物・内分泌疾患
    ピル(経口避妊薬)などホルモン剤の使用中断後に一時的に周期が乱れることがあります。
    また、甲状腺疾患(甲状腺機能亢進・低下)、高プロラクチン血症など内分泌異常も原因となりえます。


  • 加齢による卵巣機能の低下
    初潮、更年期前後はホルモンバランスが乱れやすいため生理周期をはじめとした月経異常が生じやすくなります。


症状の把握には、問診・基礎体温測定・超音波検査・ホルモン検査(LH, FSH, エストロゲン, プロゲステロン, プロラクチンなど)が一般的に行われます。


【西洋医学における治療・対処法】

  • ホルモン療法
    低用量ピル
    月経周期を安定させる効果があり、過多月経や月経痛を軽減します。
    HRT(ホルモン補充療法)
    更年期前後の卵巣機能低下に対して用いられることが多いです。


  • 生活習慣の改善
    バランスの良い食事
    鉄分やビタミンを意識したメニュー(例:緑黄色野菜、レバー、豆類など)が提案されます。
    規則正しい睡眠とストレスケア
    ヨガやマインドフルネスなど、心身ともに落ち着くことができる趣味の時間を確保し、ストレスの発散を促します。
    適度な運動と体重管理
    過度なダイエットや過度な運動は避けるようにしましょう。


  • 痛み・出血量のコントロール
    鎮痛剤(NSAIDs)の適切な使用
    ”痛いからすぐに服用する”ではなく、日常生活に支障が出るほどの痛みであれば服用が推奨されます。
    鉄剤の補充
    貧血がある場合は鉄剤投与が検討されます。


  • 婦人科疾患の治療
    子宮筋腫・子宮内膜症などに薬物療法(抗ホルモン薬など)や手術療法(子宮筋腫核出術など)が検されます。


西洋医学では周期の乱れをとにかく整える。

それに伴って発現している症状をいかに抑え、必要であれば病巣を取り除き、不足しているものは補充する。

といったことを重視しております。

あまりにも生理痛(月経痛)が強い場合には、敢えてピルやホルモン療法にて生理の周期を遅らせたり、無月経にすることもあります。


では、東洋医学はどのような考えなのでしょうか。


経乱(経行先後無定期)とは?(東洋医学的視点)

中医理論の概要

中医学では、月経は「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の五臓のうち、特に「肝」が気の巡りを司り、「腎」が生殖機能を維持すると考えます。


経絡を通じて全身の気血が調整され、正常な月経が維持されるととらえます。


経行先後無定期でも、随伴症状や体質、生活状況によって幾つかに分類されます。


代表的な弁証分類と症状対応

  • 肝鬱気滞(かんうつきたい)
    【症状の特徴】
    ・ストレスや情緒抑圧により気の巡りが滞る。
    ・胸部・胸脇部の張り感、イライラ、不眠、食欲不振など。
    ・月経は早く来る(経行先期)が多く、経血は暗紫色で塊が混じることがある。
    【治療方針・代表処方】
    ・疏肝理気(そかんりき):
    肝の機能を整えることで結果的に気の巡りをよくする。
    →代表処方:逍遥散、加味逍遥散など


  • 気血両虚(きけつりょうきょ)
    【症状の特徴】
    ・疲れやすく、顔色が淡い、動悸、息切れ、めまいなど。
    ・月経は遅れ気味(経行後期)で、経血量は少ない(過少月経)。
    【治療方針・代表処方】
    ・補気養血(ほきようけつ):気と血を補う。
    →代表処方:当帰補血湯、帰脾湯など


  • 血熱妄行(けつねつもうこう)
    【症状の特徴】
    ・情緒が高ぶりやすく、イライラ、口渇、便秘などが見られる。
    ・月経は早期に来ることがあり、出血量が多くなりやすい。
    ・経血色は鮮紅色でサラサラした出血が特徴。
    【治療方針・代表処方】
    ・清熱涼血(せいねつりょうけつ):血熱を冷ます。 →代表処方:清営湯、黄連解毒湯など。


  • 腎虚(じんきょ)
    【症状の特徴】
    ・腰膝のだるさ・冷え、耳鳴り、腰痛、尿回数の増加或いは尿量減少、夜間尿などが見られる。
    ・月経は遅れることが多く(経行後期)、量は少ないか経血が薄い。
    【治療方針・代表処方】
    ・補腎固摂(ほじんこせつ):腎を補い、経血が漏れ出ないように固摂する。
    →代表処方:六味地黄丸、知柏地黄丸など


  • 血瘀(けつお)
    【症状の特徴】
    ・月経痛がひどく、暗紫色の塊が混じる。
    ・経血はドロッとした血塊状。
    【治療方針・代表処方】
    ・活血化瘀(かっけつかお):血の流れを改善し。瘀血(滞った血)を排除する。
    →代表処方:桃核承気湯、桂枝茯苓丸。


実はまだまだあるのですが…
ここでは代表的なものとしてこの辺りの紹介で留めておきます。


セルフケア(養生)のポイント

弁証によって細やかなセルフケアは変わるのですが…

以下の3つの心がけは、共通して良い結果を招いてくれ、気血のバランスを整えやすくなります。


  • 気の巡りを整える(ストレスケア)
    散歩、ヨガ、深呼吸などを習慣化し、(ストレス関与を含む)気滞を解消する。


  • 気血を補う食事
    黒ゴマ、クルミ、黒豆、アサリなどで腎や血を補い、
    米、芋類、うずらの卵などで気を補う。
    柑橘類や梅干しなどの酸味を程よく摂ることは肝の疏泄をよくしてくれます。


  • 下腹部を冷やさない工夫&良質な睡眠
    ・腹巻きや生姜湯で下腹部を温める。
    ・就寝前の電子機器使用を控え、就寝時間を一定に保つ。


まとめ

西洋医学的に「生理(月経)の乱れ」は
”周期が短くなる・長くなる”、”出血量が多い・少ない”

などが生理不順として捉えられ、ホルモン検査や超音波検査で原因を特定し、ホルモン療法、生活習慣改善、婦人科疾患への対処が行われます。


東洋医学的には、「経乱(経行先後無定期)」と呼び、各弁証分類によって鍼灸や漢方などを用いて身体全体のバランスを整えます。


セルフケアとして、適度な運動やストレスケア、食養生、睡眠の確保、体を温める工夫など、日常生活レベルでできる対策が重要です。


これは西洋、東洋ともに共通していえることでしょう。


月経の乱れは、放置すると生活の質を低下させるだけでなく、長期的には更年期障害や骨粗鬆症など、将来的な健康リスクにもつながりかねません。


気になる症状があれば、まずは婦人科や鍼灸院など専門家に相談し、自分の体質(弁証)に合ったアプローチを行うことをおすすめします。


茨木市 鍼灸 縁庵にも女性疾患・婦人科疾患で不調を訴える方がたくさん来られております。


その症状を抑え込むだけではなく、「なぜ発生しているのか?」といった点に着目して、 一緒に根本的な原因を見つけ、改善していきませんか?



最後になりましたが、生理のリズムは女性にとって大切なサインです。

”乱れ”に気づいたら早めに対策をとり、より快適な毎日を過ごしましょう。


本記事が「月経の乱れ(経乱)で悩むすべての方」にとって、知識と行動の一助となれば幸いです。

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鍼灸 縁庵

住所:大阪府茨木市永代町6-19 近藤ビル402

電話番号:090-3890-4915

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